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種 Talk 02農業と食文化の地域内循環システム(後編)
(フードハブプロジェクト)

神戸市北区淡河町「淡河宿本陣跡」
SPEAKER
真鍋太一さん (株式会社フードハブ・プロジェクト 支配人)
白桃 薫さん (株式会社フードハブ・プロジェクト 農場長)
ハキハキとテンポよく話しだされた真鍋さん。

食に関わる新たな循環

「真鍋です!」5年前に家族と東京から移住しました。出身は愛媛県で、小学校5年と2年の子供がいます。現場の支配人をしています。学校というのは社会そのものだなということで、循環をテーマに保育園から高校までの全学年で町と連携しながら食育をやっています!
白桃家が20年以上続けてきた田圃の授業があったんですけど、イベント的になっていたものを、我々が入ることで世界のコメの授業をしたり田植えや稲刈りをしたり。白桃家が70年以上作り続けているもち米の種を取って選別して、苗をたてて次の学年に受け継ぎ循環するということをやっています。
餅をついてバザーで販売したり、食べたりを各学年が行い、米ぬかボカシ肥料やわらマルチなど畑の中でも循環を行っています。
また町に農業高校があり、定員割れをおこすと地域のバスがなくなってしまう。
「バス無くしたらだめだよね」ということで、我々が関わり、お弁当プロジェクトを開始しました。

生活科の生徒たちが、学校で育てた農作物と町で仕入れた食材でお弁当を作って販売。お弁当は100食があっという間に完売したそうです。その生活科は、農家の嫁を育てるという目的で戦後出来た学科。「さすがにそれは古いだろ」ということで学科改正ということになり、これまでの実績から行政と民間の垣根を超え、新たに地域創生類環境デザインコースと食のプロデュースコースを立ち上げることになったそうです。いま学校と一緒にカリキュラム作りの最中で、「次世代の農業とか食の担い手を育てよう」という学科にしたいと話します。
かま屋でバイトをしている「きたい君」は、料理人になりたくて、市内の高校には行かずこの町へ残りこの農業高校へ入学した一人。かま屋にきて2年目で、外国人の料理人に付いて一緒に料理をしているそう。フードハブ・プロジェクトをきっかけに新たな芽が出て育っています。
また、かま屋では地域のお母さんを講師に料理教室をおこなったり、子ども達と地域のお爺ちゃんお祖母ちゃんが交流するイベントなども日々行われ、地域の人同士が学び教え合う場になっているそうです。

お皿に盛られた地域の食材を視覚化

かま屋に掲載している産食率は、神山産の食材品目数÷食材品目の総合計数は学校給食をもとにした計算値で毎日測って出しています。食堂のテーブルには毎月掲載し、WEBでは週ごとに公開しています。
産食率は、去年のデータで平均54%、最近は60%を超える日が多くなり農業チームが頑張っているのと、地元の農家さんも頑張ってくれている。また、これまでデータを出してくれなかった企業も出してくれるようになりました。

「我々の活動も認めらるようになってきました」と話す真鍋さん。地道に伝えるという取り組みは、かま屋で出しているかま屋通信(新聞)も大きな役割です。町内で読率が8割超える新聞の地元の折り込みチラシに毎月一度いれ、今1年以上経って、SNSを見ていない住民の方にもようやく自分たちの活動が伝わり始め「応援されているな」という実感がありますと。発信情報をアナログにすることで高齢化率の高い集落の幅広い世代にじっくり、ゆっくりと伝えることに取り組まれています。
また、かま屋という屋号にも地域の愛着が見てとれます。この地域ではかまどがある場所を「かまや」と呼んでいて、気軽に立ち寄ってお茶飲んで帰っていくという意味もあるそうです。またいつからかスタッフのお父さんが「かまや」と言い始め、この名前に決めたそうです。

「地域」をオリジナル商品に

お皿も徳島の民藝である焼物にし自分たちの藁灰を利用して焼いてもらったり、役場と連携して地元の杉を使って割り箸やトレー、テーブル、椅子を作っています。またテーブルは地元の大工さんに協力して作ってもらっています。
白桃家で70年以上継いできていた小麦は、醤油味噌を作らなくなったが種だけはずっと継いできた。
「これも宝ですね。」白桃も小麦栽培は半信半疑だったんですが、石臼を復活させパンを焼こうと、今3年目で3倍となり今年は800キロを目標にしています。

オリジナル商品の考え方は、生活改善運動の一環でまとめられ、今から約40年前に発刊された『神山の味』という冊子をバイブルに商品を考えています。紙面の表紙をデザインしお酒のラベルや会員カードにも使用しています。「カミヤマメイト」という商品も白桃の爺ちゃんから「小麦に米ぬかを混ぜて食べよった」と聞いて地元のお母さんたちとシンプルなレシピで商品開発をしました。また、白桃家の焼肉のタレもめちゃくちゃ美味しくて商品に。地域の味をどう繋げていくかを考え、レシピも公開していきたいんです。

毎日いただきます

「生きるための食」か「快楽・美食のための食」か、私たちは日常の食を少しずつ良くすることで様々な地域課題が解消されると思っています。また日常の食をよくすることが、地産地食により地域への愛着が保たれ、地域の資源が循環しコミュニティが成長していく。農業者の育成が中心ですけど地産地食をすることで地域ごとのエコシステムが出来ていくと思っています。

地域の味を受け継ぎ、誰もが作れる日常の食卓に。地域の味は更に進化していきます。
40年前に酒蔵がなくなり隣町の酒蔵に協力してもらい、山水とご飯用のお米を使って日本酒を作ってもらったそう。初しぼりの試飲会で「これまで来られなかった地域の方もたくさん来てくれました。」と地域での手ごたえを語る真鍋さん。地域の食を外の視点でも確認するように、外国人シェフによる料理イベントや商品作りも実施。地域で支える食の循環というシステムが、着実に地域内に浸透している。
これまでの壮大な計画を一気に進めたという真鍋さんのお話に、会場にいた方すべてが驚き、自分も何か出来るのではと胸を熱くされたことだと思います。

文:對中剛大 写真:片岡杏子


真鍋太一(まなべたいち)

1977年生まれ。愛媛県出身。アメリカの大学でデザインを学び、日本の広告業界で8年働く。その後、アメリカで就職するが、挫折して帰国。空間デザイン&イベント会社JTQを経て、WEB制作の株式会社モノサスに籍を置きつつ、グーグルやウェルカムのマーケティングに関わる。2014年、徳島県神山町に移住。モノサスのプロデュース部部長とフードハブ・プロジェクトの支配人を兼務。

白桃薫(しらももかおる)

農業長。神山町出身。一般社団法人神山つなぐ公社所属。神山町役場の職員として11年間勤務。暮らしや仕事中で、日々神山の農業に対して危機感を抱いていた。神山町の地方創生ワーキンググループで考えたフードハブの原案に「これしかない」と思い実行を決意。現在は、神山つなぐ公社の、農業担当として立ち上げに参画し、実際に田畑に出て農業に取り組んでいる。

株式会社フードハブ・プロジェクト
2018年度グッドデザイン賞において、「グッドデザイン・ベスト100」、特別賞「グッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)」を受賞。


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