あなたが影の支配者だったのですね。


種はおよぐは、「食と里をつなぐ」をテーマに約4年間取り組みを進めてきました。その都度やっていることが変わるよく分からない集団を、一旦まとめてみることに。有機農家の局長・大皿さん、イラストレーターの副会長・山内さん、カメラマンの岩本さん、そして兼業農家の鶴巻がお届けする、種はおよぐのこれまでとこれからのお話です。

イベントをして都市部の人と農村部の人を繋げてみよう期(2018年度)

鶴巻さん:種はおよぐってそもそもどうやって始まったんでしたっけ?

山内さん:そこから(笑)農政を担当している市役所の山田さんから、農業のことって農家の人しか喋らないし分からないから、クリエイターとの関わりを作って、デザインも含めてどういうふうに都市部と農村を繋げることができますかね?という相談から始まりました。

大皿さん:最初はクリエイター側に話がいったわけやな。

山内さん:でも僕はイラストレーターなので、ディレクションとかはできませんからということで、今のクリエイターチームに声をかけました。

鶴巻さん:2018年ですかね。塩屋にある784 JUNCTION CAFÉで、農家や漁師が集められた謎の会合がありましたね。山田さんが「食と里をつなぎたいんやぁぁぁ!」って熱弁してたやつ。

山内さん:そうしたキックオフ会を経て、イベントを開催して毎回ゲストを呼んで、農家や漁師、一般の人も一緒に話を聞いて交流しようみたいな感じになりました。

鶴巻さん:それで、淡河宿本陣跡、弓削牧場、FARMSTANDといったところで、県外のプレイヤーの方をお呼びしてお話を聞いていったんですね。ゲストのお話、勉強になって面白かったです。

大皿さん:その時はまだ俺も鶴巻くんもただの参加者やったな、たぶん。いつからメンバーとして会議に入るようになったのか覚えてないわ。

不安げな表情の参加者、大皿氏。

岩本さん:そこから年度を越えて2019年度、メンバーの對中さんの拠点である京都の南山城村に行ったり、ヤギの可能性を探ったり。このあたりから僕も関わり始めました。

大皿さん:岩本くん最初からいたやろ。

岩本さん:いやいないっすよ。あのね、みんな記憶が曖昧すぎるんですよ。しっかりしてください。

取材してサポートしてみよう期(2019年度)

鶴巻さん:そういったことをしてく中で、話を聞くのも大事やけど、神戸の農村部で今起こっている種を拾っていかないとだめだよねって話になりましたよね。何かを始めても、発信力が弱いと伝わらないので、デザインの目線でお手伝いしたり、種はおよぐのサイトで紹介したりすることで、広報の一助になれたらいいなと。

山内さん:そうして、田の樹んフルーツ、淡河バンブープロジェクト、ヌフ松森医院といった最近始まった取組みを取材しに行きましたね。

鶴巻さん:ここは正直に思ったところを告白します。取材した後も種はおよぐがサポートに入ろう!ってみなさん盛り上がってたんですけど、取材の日程を決めるのすら調整つかないのに絶対無理やろ!って思ってました(笑)実際、やっぱり継続的にこのメンバーでサポートに入るという形は難しいなと。

全勢力を投下して話を聞きに行く。人数多すぎませんか?

岩本さん:そういえば、六甲アイランドにある神戸ベイシェラトンホテルの貸農園プロジェクトは大分伴走しましたよね。

大皿さん:種はおよぐとしてやった感まったくないけどな。

岩本さん:山田案件に巻き込まれましたね。形になって、今も続くものになっているので嬉しいですけれど。

大皿さん:山田はおよぐやん。

鶴巻さん:独立国家ですね。

コロナ禍に入ってどうしよう期(2020年度)

鶴巻さん:そんな感じで形も定まらないまま色々と試していたら、コロナ禍に。

岩本さん:食と里を「つなぐ」というテーマなので、人と人とが会えない状態で、種はおよぐはどうするんだということになりましたね。そして会議の様子をそのままYouTubeにアップしたら面白いんじゃないかとか迷走し始めて(笑)

迷走感溢れる「種はおよぐラジオ」。
普段の会議の様子を生配信するとのことだったが、配信すると緊張して全然喋らない始末。

鶴巻さん:行政側から、飲食店需要がなくなったことで、日本酒、そして日本酒の酒米を作っている農家が大変だというテーマをいただき取材に行きました。知る機会になったものの、課題の規模感が大きすぎて、僕たちや、記事を読んだ人が何かできるのかという観点でいくと難しいなと思いました。

山内さん:オンラインでゲストを呼んでお話も聞きましたね。同じくとても学びになったのですが次に繋げられず、それぞれの単発感が拭えなかったですね。

岩本さん:そんな中、コロナ禍に入って少し自分の仕事が落ち着いたので、鶴巻さんの畑を手伝ってみたいなーと思って、ちょこちょこ援農(農業ボランティア)に行き始めたんですよね。

鶴巻さん:これが僕の中で結構ターニングポイントで。援農をもっと緩やかな形でできないのかなという気持ちが湧いてきたんですよね。岩本くん、酒抜きに来たとか言うし(笑)それでいいんですよ。食と里をつなぐってこれやんって。

岩本さん:それで、『怠農研(怠惰な人類のための農ある暮らし開発研究室)』という名前をつけて、動画記事だったり取材記事だったりを作って調査を始めましたね。

鶴巻さん:自分のことだったので、YouTubeもちょっと適当なノリでやってみたり、面白おかしく取材の記事を書いてみたりしました。そうしたら結構反応がよくて。しかもメンバーの誰も、そんなテイストはちょっと…って言われなかったのでいいかなみたいな。

岩本さん:そもそもチェック機能ないっすよ。

やっぱり、種を発信しよう期(2021年度)

鶴巻さん:そして今年度です。っていうかもう4年もやってたんですね。

大皿さん:衝撃やな。

鶴巻さん:毎年度のごとく「種はおよぐとは?」から始まる会議(笑)

山内さん:改めて、整理しましたよね。あくまで農村部、もしくは漁業で起こっていることにスポットをあてるのが種はおよぐだと。

大皿さん:だったら俺は、農家をもっと知ってもらいたいとか、新規就農に関することが分かりにくすぎるので、そういうことを発信したいと。

鶴巻さん:僕は、神戸農村スタートアッププログラムなども運営しているので、卒業生が何か始めたときに、取材して発信して応援したいと思いました。あと怠農研も形にしたいと。

岩本さん:僕は長田に住んでいるので漁師が近くにいて、漁業に関する課題も見聞きしていました。それらの発信や、農村部と繋げられる何かがないか模索したいなと。

今年度は初めて海のことにも。

鶴巻さん:結果、15本ほどの取材ができましたね。

岩本さん:コスパめっちゃいい(笑)

大皿さん:農家が農家の取材行くってすごく楽しいらしい。勉強になるし、繋がるし。今神戸ではファーマーズマーケットのようなものが少しずつ増えているけど、出ませんか?って誘える関係性になったり。いい繋がりができてるんちゃうかな。

山内さん:種はおよぐはメディアという認識になってきたかもしれませんね。種はおよぐに取材してもらって嬉しいという声を聞いて、僕も嬉しいというか。

大皿さん:それから、西宮阪急で種はおよぐの活動を紹介させてもらいましたね。年に何回かはああいう対面のイベントがあってもいいかな。

岩本さん:魚も、紆余曲折ありながら、魚の食べ方や保存の仕方を学んだらもっと地元神戸で獲れた魚を食べるんちゃうかとか。ああいう実験的なことは種はおよぐっぽくて楽しかったですね。

種はおよぐのこれからって?

山内さん:ぶっちゃけ聞きたいんですけど、大皿さんや鶴巻さん、農村側の人はこの活動をどう思ってるんですか?

大皿さん:もう最初どこを目指してるのか、何をしたいかさっぱりだったけど(笑)でもなんとなく少し見えてきて。俺はメディアとして成立させたいかな。種はおよぐは、割とフラットに公平に取材している気がして。俺はあんまり関わりないけど、鶴巻くんならいけるとか。行政側の目線もあるしね。網の張り方というか、囲えるところがめっちゃ広い。

岩本さん:それ大事。

鶴巻さん:これからっていう方への取材がいいですよね。普通は実績があるから取材を受けるわけですけど、これから頑張っていきたい人の取材って、僕はすごくやりがいがあります。あとは、いじれるっていう。例えば普段大皿さんと話してても、別にビジョナリーなことなんてほぼ喋ってないわけですよ。そういうテンションで伝えたいですよね。会社向いてないから独立したとか、そんなもんなんで。

岩本さん:でも取材したどのプロジェクトも着実に進んでていいですよね。

大皿さん:中の話をすると、取材に行くとき、クリエイターのみなさんは忙しいから声かけていいのかなと思ってたけど、ウェブ担当の多々良さんが取材行ってめっちゃよかったと言ってくれて。クリエイターと農家という垣根もなくなっているのがいいよな。

参加者から局長になるという下剋上を果たした大皿さん。

鶴巻さん:どの媒体も、その名前やブランドが持つイメージがありますけど、種はおよぐは元々ルールをあまり決めなかったのが結果的によかったのかもですね。それぞれの書き方で発信しているのでカオス。

大皿さん:記事、統一感ないもんな。

鶴巻さん:そのインディーズレーベル感が好きですね。

岩本さん:クリエイターがいるのが強みなので、足元に届いていないところと、今世の中の常識と言われているところの斜め上ぐらいも取り上げていきたい。とは言え、農家と会ってると、アーティストと喋ってるのと同じぐらい気遣いますよ。癖が強い(笑)

鶴巻さん:まとまっている感じがしませんが、では最後にいいことを言っていただき締めたいと思います。

岩本さん:僕は種はおよぐの分かりやすい部分担当だと思うので、やっぱり旬のものを紹介していくとか、人のコミュニティに依存しない企画もしたいです。旬っていうキーワードにしたときに、意外と色んなものに横串刺せるし、そうすると自分たちのコミュニティじゃないところも行かなくちゃいけないので、それがまた広がるきっかけになりそうです。種はおよぐマークがついている旬の情報ポスターが街中に増えていったら、秘密結社感が出てきていいですよね。

鶴巻さん:取材して伝えていくのはやっぱりいいなって。あともう一つ、種はおよぐっぽいと思ったのは、やっぱ味噌を仕込むみたいな感じで、みんなで干物を仕込んでシェアしてもいいよねって生活習慣の実験ですよね。ちょっと見方を変えるとか、やり方を変えるっていうのは、まさにクリエイターたちが集まってくれているからできた感がありました。取材とは別に、こういう生活様式を提案するようなネタも毎年1つやりたいですね。

山内さん:僕はもうずっと、いい感じやなと思ってて(照)

岩本さん:一番使えへんコメントや。

山内さん:僕は人が集まった時点で役割が終わりで、後はもうサポートというか。色々ありますけど、楽しく回っているのを見るのが本当に僕は嬉しくて。イラストレーターとしての役割じゃなくて、接着剤や間接材としての役割として、次年度どういうことが起こるかっていうことを楽しみにしています。

岩本さん・鶴巻さん:じゃあ締めですね。よ、局長!

大皿さん:いやもう本当に皆さんよく頑張ってくれたと(笑)なんかね、集まれる場っていうのが今あんまりなくて。いろんな人を集めてイベントするのはちょっとハードル高いけど、メンバーで実験して提案するという形は続けていったらいいなと思うんですね。だから、実験とか勉強するっていうところに重きを置いていきたいよね。

山内さん:実験、いいですね。

大皿さん:時化(しけ)の時の船に乗せてもらうとか。

岩本さん:時化の船ね。漁師すら漁に出てないのに出してくれっていう。それ大分やばい実験ですね。GoProのカメラは貸しますよ。

鶴巻さん:見てはいけないものが映りそうなのでそれはやめましょう。

いつも岩本くんの写真がないので載せてみておしまい。