近畿農政局のみなさんに、「みどりの食料システム戦略」について教えていただいた帰りに、早速振り返り会を開催してみた。生産者だけの戦略ではなく、消費者も含めた日本に住む全員の話。この時代だからできること、それぞれが担えること、いろんな視点から考えてみました。

有機農業の多様性と、オーガニックビレッジ。

岩本さん(カメラマン):いやーすごかったですね。局長にご対応いただき、さらには5人も一緒に同席されるとは。緊張しました。

山内さん(イラストレーター):服部さんがジャケット着てるのびっくりしましたよ。それで、大皿さんと鶴巻さん服装ラフやなと。僕一応襟付きで。

鶴巻さん(兼業農家):いやいや、僕バンドTシャツしかないことに朝気付いて、この無地のTシャツさっきユニクロで買ったんですよ。

大皿さん(有機農家):パタゴニアはいける。俺農家やし。

鶴巻さん:永遠に本題いけない気がするので進めますよ。服部さん今日のお話聞かれていかがでしたか?

服部さん(クリエイティブディレクター):オーガニックビレッジの話は早く取りたいですよね。

大皿さん:流通のところまでを踏まえて、オーガニックビレッジ宣言できないやろか。2025年までに100ヶ所やるって言ってて、まだ1年も経ってないのに50市町村が手を挙げてる。

山内さん:早いっす。

鶴巻さん:そもそも、宣言するための要件ってあるんですか?

大皿さん:いやそれがよくわからへん。神戸市でも少し相談してるんやけど、ずっと農政畑の人とかは、やっぱりオーガニックっていうことに関しては、今までのあれやこれやもあるから、どうかなぁと。

鶴巻さん:農協さんの存在もありますよね。宣言するときには、市と農協の関係性も重要そうです。

大皿さん:そうそう。今オーガニックビレッジ宣言してるところで、中心になって動いているのは農協。だから農協さんもちゃんと巻き込んでやっていこうよと。

岩本さん:ちょっと言い方は難しいんですけど、有機農家って生き方でやってる人も多くないですか。業として生産量を増やしていこうっていう人と、ライフスタイル的に新規就農されてる方も多いと思います。

大皿さん:それだけ多様性があるってこと。ビジネスとして有機農業やる人もいるし、生き方でやる人もいる。目的としているところが全然違って、環境のことを考えて取り組んでるって人もいるし、付加価値が高いからやるって人もおる。でもそれを、これはいいけどこれは悪いっていうのをバッサリやってきたから広がらなかったと俺は思う。

岩本さん:そういうところのアレルギーが農協や行政にあるのは心情的によくわかるんですよね。やっぱり一次産業ってインフラなので、ある程度量を作らないといけないですし、そうなっていないとフォローや支援もしづらいというか。

食料の安定供給が一丁目一番地。今日も食べ物があってありがとうございます。

大皿さん:実際小さい規模でやっている人の方が多いからね。有機JAS認証を取ってちゃんと流通に乗せていこうっていう人もいるけど、認証なんかで縛られたくないよっていう人もおる。

鶴巻さん:例えば、今後AIロボットとかを活用して除草とかをやってもらう、それは薬を撒かないから環境にいいぞっていう。でも、環境に負荷をかけてロボット造ってるやんみたいな話にもなるじゃないですか。そういうのって、有機農業に受けられるのかなと。

大皿さん:有機農業なのに、自然のもの以外を使ってるやんかとか言い出したら、何も広がりがないよね。機械を使ってるからだめとか、じゃないと思う。農薬や化学肥料を大量に使って環境に負荷をかけるよりは、負荷を少しでも減らしてやっていることをよしとしてあげんとね。

服部さん:でも多様性という言葉はいいですよね。有機農業の多様性、だから浸透しやすい、アクセスするポイントが増えてるってことだと思う。

大皿さん:そうあるべきだと思いますね。

新しいサプライチェーンを、独自につくり出すというムーブメントになったらいい。

服部さん:今日のサイクルの話なんかは、結局サプライチェーン(※製品の原材料・部品の調達から販売に至るまでの一連の流れ)の話でしかないやんか。それぞれのスタイルを持った人たちが、各スタイルのサプライチェーン作りができたら、別に大きなシステムを作る必要もないし、それでええんちゃうかって気がする。だから、サプライチェーンを独自で持っているかどうかが大切で、大皿さんたちのCSA(※消費者が生産者に代金を前払いして、定期的に作物を受け取る契約を結ぶ農業)はまさしくそう。今までの流通だけでなく、それすらも作るっていうのがムーブメントになる方がいい。

大皿さん:顔の見えるところで完結したらそれで一番幸せやと思う。やっぱり農業と、消費者や街との距離がありすぎて。身近に農業がないんやと。

岩本さん:僕もこの2、3年ですわ。仕事で携わって農業を身近に感じているのは。

山内さん:あと個人的に面白かったのは、消費者に調達の部分をどうやってわかってもらえるかっていう部分で。そこには、若い人も含めてデザインの領域で関わりしろがあって、重要になってくるなと思って。知ってもらうためのアプローチの仕方というか。例えば生産者の顔写真がスーパーの野菜売り場に置いてあるけど、もっと前段にある調達も含めた話を知ってもらうためには、やっぱりデザインの力があったらと。

資料を確認しながら熱く語る山内さん

岩本さん:この取材シリーズでサプライチェーン全部回りたいですよね。農協もそうやし、川上から全部。

大皿さん:学校給食とかも、野菜で流通させるってすごい難しいって言われてて。やっぱり効率化とか調理に対してね、サイズ感もあるし。現実的にはやっぱ米とか………

店員さん:はい、生中とお造りです。

岩本さん:美味しそう、結構サイズ大きい。

山内さん:店員さん、ジャニーズみたいですね。

服部さん:カッコいいやん。モテそうやん。

鶴巻さん:鬱陶しいおっさんたちになってますよ。サプライチェーンのボトルネックみたいや。

岩本さん:以前取材した四国の畜産農家さんがいて、飼料を国内で賄うために、地域でトウモロコシの生産を始めていて。彼らは元々コロナ禍の前からそれをやっていて、単純にすべてを見える化したいっていう気持ちでやってたら、結局海外からの飼料が高騰して助かっているみたいな話をしていましたよね。

大皿さん:今まで、分業することで効率化されて規模拡大できたけど、自分たちで全部やってしまうっていうのは、割と農業の中では六次化とかで増えてきているよね。

山内さん:効率化で細分化されたものを、もう1回全部見てみると。

大皿さん:そうですね。それによって付加価値をつけていこうと。

岩本さん:領域が変わりますけど、デザイン業界も分業がどんどんなくなっていってて、農業も一緒なんやと思って。今までどんどん細かくしてたのが、逆の動きになっている。

山内さん:二分化しているような気もします。

服部さん:グラフィックなんか特にさ、もうどんどん減っていくやんか。デジタルになるから、6割印刷物やったものが、6割デジタルになっていく。ということは、4割が専門職であらざるを得ないから、どちらかいうとクラフトワークに近い領域に変わっていくんですよね。一方で、やっぱりデジタルのメディアにどんどん変換されているから、動画とか、インターフェイスのデザインっていうところまで落とし込まないと仕事にならないってことが出てくる。だから、多領域に仕事しないといけなくなるんですよね。

鶴巻さん:デザインと農業の潮流みたいなものが通じてて面白いですね。別の観点でいくと、消費者が環境とか食料問題に関心が低いっていうのは、ちゃんと行き届いてるからなんじゃないかって。この間ある政治家のスピーチ見ててなるほどと思ったのが、若者が選挙に関心がないのは、国として幸せなことじゃないかと。命の危険もないし、普通に生きてるわけだから、関心がない方がむしろ平和な社会の証明ではないかみたいなことを言ってて。一応食についても今はそういう状況なのかなと。ただ、政治も食も関心がないままでいいわけではなくて、少しずつ社会のバランス崩れていって、農家と繋がっておかないとちょっとやばいよねっていうくらいになってくると、流通とか繋がり方が変わっていく気がするんですよね。

大皿さん:ロシアウクライナの問題でいろんなモノが値上がりして、そのまま進んでいくと自給していないと困るんじゃないかって思った人はある程度いて、いろんなところでざわざわしていますよね。

服部さん:やっぱり学生でも、ディストピアムードの方に引き寄せられている子もいっぱいいて。ある映像で、30年後の2055年のテレビニュースを想像したっていうのがあって。掘っ建て小屋みたいなところに日本人が行列を作っていて、「これはどういう行列ですか?」ってインタビュアーが聞いたら、「今日やっとお米の配給があって。」みたいな。自給率って話を捉えると、やっぱりそこにいくやんか。それが30年後の2055年と言われた途端に、少しリアリティが出てきますよね

今のテクノロジーを活用した、生産者との新しい関わり方は?

岩本さん:とはいえ、農業を今から自分がやるということはなさそうだなと思っていて。ならば、関わり方のファーストステップとしては、農家から直接買うとか、CSAで買うことだと思っているんですよ。でもその次にもう一段階濃い関わりがあってもいいんじゃないかって思っていて。例えば複数の農家で直販しているチームが法人を作って、そこに出資することができるとか。

鶴巻さん:出資という形で関わるのはいいよね。クラウドファンディングのもう少し踏み込んだ版。

岩本さん:大皿さんのCSAって半年とか2ヶ月ごとにお金払うじゃないですか。この取り組みを5年10年応援したいなと思ったときに、買う以外の関わり方が欲しいなと思います。あ、僕ちゃんとお金払ってますよね?請求書届いてなくて。

大皿さん:払ってないんちゃう?

岩本さん:いやいや払ってるって!ちゃんと請求書くださいよ!

大皿さん:結構人数多くなってきたら、お金の管理が大変なのよ。

岩本さん:大皿さんたちのCSAなんか、それこそちゃんとDX(※デジタル技術を社会に浸透させて、人々の生活をより良いものへと変革すること)したらいいのにってめちゃ思うんですよ。いくらでもシステムあるのに、まあまあアナログにやってますよね。

大皿さん:いやもうそこを何とかしたいよ。CSAのバックヤードを管理するアプリみたいなのを作ろうみたいな話で。

岩本さん:やりましょうよ。

大皿さん:岩本出資で。

流れ弾飛んできた

岩本さん:……金額によりますけど。出資者集めるのはいけそう。これなぜかというと、自分たちが5年10年安心して食べられる生産環境を作りたいというだけなんですよ。

鶴巻さん:保険に加入するみたいなもんだよね。

大皿さん:兵庫県のある若手有機農家グループがCSAをやりたいと。でも実際自分たちのお客さんを広げていく中でも、先があんまり見えへんなぁと思っていて。そんな時に、ある企業さんがボンときた。個人個人もすごく大切やけど、企業へのCSAという形もありやなと。

鶴巻さん:生産性や流通のことを考えると、企業さんと手を組んでそこで働く社員さんがまとめて購入してくれるのは助かりますね。

大皿さん:最初に関わってくれている企業さんの注文数は減ってるんやけどな。難しい。

岩本さん:それってちゃんと営業してないからじゃないですか?

大皿さん:いや、営業を伴うのは、僕らのやり方としては本意じゃない。

岩本さん:じゃなくて、どういうことをやってるのかっていうのが意外と伝わってないのかなと。

大皿さん:昔の産消提携(※生産者と消費者が直接連携して、顔の見える関係の中で農産物のやりとりをしていくこと)は、消費者主導でやってたんやね。だから生産者にそれを求めるとやっぱり無理なんよ。生産する、供給する以外に、啓蒙まですべて取り組むことは難しい。だからコーディネーターがいるよねっていうところで。

岩本さん:それは確かにそうですね。農業も漁業も、やっぱり通訳や言語化する人が少ない。だからそこはやっぱりいると思います。でも僕は大皿さんたち自身も、流通のアプリやDXに取り組んでほしいんですよね。絶対事務作業が楽になる。

大皿さん:して。

俺の目を見ろ!岩本!

岩本さん:………。あ、あと、企業という言葉を聞いて思ったのは、単純に僕はCSAってローカルの流通やと思ってたけど、そうじゃないということですか?

大皿さん:企業と中山間地の農家さんが繋がれるっていう一つの手段は企業CSA。例えば兵庫や京都の山間地にある農家さんが、地元の市民だけを集めてやるのはやっぱりしんどい。だけど、大阪、京都、東京、もうどんだけ企業あんねんと。企業だったら、山間地の農家さんも繋がれる。これで初めて広がりが見えると思う。都市部やからお前らええよなって言われ続けてるから。でもそれじゃあCSAは広がらへん。

岩本さん:フードマイレージ(※食料の輸送距離)の問題ってどこまで繋がってますか?輸送コストというか、環境負荷があるじゃないですか。

大皿さん:例えば、ここ数年人気の農家の直販サイトって基本的に個配やんか。けど企業CSAなら、50人の社員さんがいたら50人分まとめて直接送れる。

岩本さん:なるほど、だいぶクリアになりました。商圏が広がったときに、やっぱりCSAのサスティナブルな状態と輸送っていうのが相性悪い気がしたんですけど、個配じゃないって考えたらそうかもしれないですね。例えば、URとか団地とコラボしたらいいんじゃないですか。団地に直接届けるっていう形。

大皿さん:そやね。昔は婦人会などの消費者団体が産消提携のコミュニティだったけど、今はもうそういうのはなくなっていて、コミュニティが変わってきてるからね。

鶴巻さん:昔は人々の時間の提供によって支えられていたシステムを、DXで工数を減らすなどして新しい形を作っていけるといいですね。企業CSAも、オンラインや動画があるので、現地に行ける回数は少なくても、コミュニケーションは昔よりかなりやりやすいですし。

岩本さん:農家さんを知ってるだけで美味しく感じますよね。

大皿さん:味覚以外の情報もあるよね。

新しい流通の仕組みを、生産者と消費者が共に考える。

岩本さん:少し派生するのですが、最近難しいなと思うのは、大きな経済と小さな経済みたいなものが混ざり合ってきているじゃないですか。でも例えば地方において、大きい企業の開発って全然持続可能じゃないような気がしていて。僕らが作ろうとしている顔の見える小さな循環とか経済圏みたいなことと、どう共存するのかなって。

服部さん:やっぱり順平とかそういう役割ちゃうん。

岩本さん:そうなんすか。

服部さん:うん。大きいものは絶対必要だと思うんですよね。生産者と消費者の話じゃないけど、大きい小さいという観点でも、両方をつなぐ翻訳者がいる。順平くらいの世代にかかってるんじゃないかな。上からの方角も、下からの方角も。

鶴巻さん:やっぱり自分も移住のことに関わっていて、自分の町に1年で2~3世帯移住してハッピーです、でも自然減の方が多くて人口はどんどん減ってます、みたいな時に、それでいいんだろうかというのもあって。例えば大きい企業が入って雇用が生まれれば、そこには経済が生まれるし、うまく繋がればいいと思うんですけどね。景観にマッチしない建物が建ったりするのは嫌ですが…(笑)

岩本さん:やっぱCSAはもっと広げましょうよ。

大皿さん:どうやって広げよ。

服部さん:DXって話をしているけど、その時にできたプラットフォームを売ればいいんですよ。

岩本さん:これ以上お客さん増えたら対応できなくなるでしょう?

大皿さん:うちはもう無理になるやろね。

岩本さん:逆に流通のシステムを作ればいいだけの話やから、プラットフォームを作りましょう。やらなあかんと思いますよ。山内さんがシステム全部デザインしてくれるし。

山内さん:なんでやねん。俺デザイナーちゃうし。

岩本さん:CSAにこだわらず、新しい流通の仕組みを考えるみたいなプロジェクトを種はおよぐでやりませんか?まずはリサーチから。

服部さん:それ水産でもできたらいいですよね。実はこのプラットフォームは林業にもいけるみたいな。これは、最小限のサプライチェーンが接点を持つためのシステムであると。

山内さん:おお…カッコいい。服部さん、なんかそのサイズのTシャツ感、松本人志みたいですし。50代って筋肉つくんですかね。

服部さん:やめて。

松本人志?探偵ナイトスクープなら、この人が局長になってまう。

大皿さん:予算ないやん。

服部さん:ないけど、オーガニックビレッジの話で、その中に流通システムも必要ですよねと持っていくと。

岩本さん:まずリサーチですよね。

鶴巻さん:例えば、大阪の都市部に住んでいる服部さんってどうやって生産者と繋がっているんですか?

服部さん:バンドの仲間づてとか?

岩本さん:結局人間関係がある人は繋がる、でも普通に会社勤めしているとないんだろうなと。

鶴巻さん:そうなんですよ、そこを何とかしたいんですよね。一部の人だけアクセスできるものにしたくないというか。

大皿さん:CSAの活動って、取材してもらったりして注目してくれているけど、どう広げていくかが自分の中であんまりわかってないんですよ。

山内さん:そういう生産者の背景や葛藤も含めて知ってもらって、繋がっていきたいですね。リサーチやりましょう!

岩本さん:でさぁ、話は変わるんすけど…

(酔っ払いの滑舌が悪くなり聞き取れなくなってきたのでここで完。)

神戸帰れるかな俺…