今回は神戸から出て、他の地域と見比べることにより神戸の魅力や課題を知る機会をと考え、滋賀・奈良・三重の四県が接する京都府最南東に位置する宇治茶の産地である相楽郡南山城村にお邪魔しました。〈種はおよぐ〉メンバーである對中さんにアテンドしていただき村ツアー。この日の最後は、童仙房区にある對中さんのお店「山のテーブル」へ。標高500mの山の上へ!ぐんぐん山道を登りきると、平地になり集落が見えてきます。保育所を改装した「山のテーブル」大きなテーブルを神戸市や南山城村の様々な活動をされている方、約30名が集いトーク&交流会のスタートです。


山田さん(神戸市):150万人の都会というイメージを持たれやすい、いまの神戸市の形になったのは60年前です。そのなかで最後に編入されたのが北区にある淡河町です。淡河町の状況は、南山城村と同じ2700人、今はそれ以外にも農村部である北区や西区の生産者さんと共に開催しているファーマーズマーケット(注:)等を通じて農村と都市との交流は進みつつあります。

神戸市全体でみても人口減少が課題ですが、人口減少を食い止めることは困難なので、それなら人口が減っても支え合える関係性をつくることを考えていかないといけないなと。そのときに、自治体だけで解決するのではなく、民間さんとの連携や、神戸市だけで出来ることって限られてくると思うので、行政区域を越えて繋がりをつくることが必要だと。そのために、食や里や農業をテーマに繋がり合えるネットワークづくりを進めているのが、この〈種はおよぐ〉の趣旨です。運営メンバーも多彩な分野から集まり、それぞれの視点を持ち寄って動いています。
これまで去年12月に徳島県の神山町さん、今年2月に岡山県の西粟倉村さんは淡河町と人口規模が近いので、頑張っている村の方のお話を聞かせていただきました。

服部さん(種はおよぐメンバー):初めてはっきりとコンセプト聞いたわ(笑)。要は、同じような課題を抱える地域のなかにも暮らしがあって、その暮らし方の価値観を地域を超えて繋げていきたいんやって初めてわかりました。

山田さん:そうです、人口が増えてる時代っていうのはやるべきことが分かり易いけど、減っていく時代っていうのは何をしたらいいのかなってところですよね。

移住や地域に入ってみての気付きは?

Caféねこぱんの永尾夫妻(村のお店) 旦那さんは木工作家:デザインやものづくりで一生いきたいという想いで、定年後奈良の訓練校で木工を習いました。それで工房として音や埃が出せる場所を探しているなかで、南山城村に辿り着きました。村自体は当時、移住促進や廃校利用のことはあまり考えていませんでしたが、一人、広い展望をもつ村役場職員さん(現道の駅社長の森本さん)が話を聞いてくれて、旧田山小学校を紹介して下さいました。

長坂さん(神戸市):村の人々からはヨソモノとして扱われませんでしたか?

永尾さん:最初は理解が少なくて寂しい思いもしましたね。でも村の伝統を継承したい思いを持つ住民さんに出会い、その方を入り口に小学校利用の話が進みました。その後は、夏休み等に帰ってきた地元の若い方がカフェに来るようになって、徐々に地元の人が来てくれるようになりましたね。今でも生駒から通っていますし、場を借りにきたという感じなので、地元の生活を邪魔せず、良いバランスで居られているのかな、と思います。

服部さん:この間、内閣府が廃校サミットを開いたんだけど、そういう所にしか農村を変えるヒントが無いんじゃないか、つまり若い人が集落に行きたくても、アクセスするポイントがなかなか無いと感じます。でも今日は、キノコノ山田さんのところで分かり易く生産過程の説明をしていただいて、おもてなしの心を感じて、入り口が開かれた感じがありました。農村でも、訪れた人への受け入れ方をちゃんと考えるという姿勢が広まったのはこの十数年の動きなのかなと。

山内さん(種はおよぐメンバー):それがちゃんと出来ている地域は移住者が入っているかもしれないですね。

田邊さん(南山城村道の駅駅長):村では道の駅ができる前から、キノコノ山田さんの他にイタリアンをされている方や、トマト農家さんの3組が若い移住者として注目されていました。まさに皆さん、行政職員だった森本(現道の駅社長)の繋がりや頑張りもあり移住されています。

服部さん:なるほど皆さん、森本チルドレンですね。やっぱり人ですね!僕らも神戸市に山田さんがいるからここまで来ていて。今日初めてちゃんとコンセプトを聞いたくらいで、この人柄に引っ張られてやってきてるんで。つまりは山田チルドレンだ。(笑)

大皿さん(神戸の農家さん):そう、僕も今日はピクニックぐらいのノリで誘われて来たけどね。そんな大した距離じゃないと思って車乗ったら、まぁまぁな場所で(笑)。

山田さん:すみません。(一同笑)
行政と地元の民間の方々との関係性が大切だというのはここ数年で実感しています。市役所のなかにも、まちづくりは行政だけで出来る事じゃないなと、そういう視点を持つ人は増えてきました。

服部さん:地域のサイズ感や距離感って大切ですよね。例えば淡河町(神戸市北区)は2700人弱、南山城村も2700人ですよね。淡河町はまだ都会に近いけど、南山城村は都市までの距離感がちょうどいいなと。

田邊さん:村は都会から近い田舎って言われていて、1時間半圏内だと名古屋も入るんです。奈良、京都、大阪、名古屋から、来やすい田舎としての価値を感じて遊びに来てくれます。

永尾さん:ねこぱんのお客さんは実は神戸市からが多いんですよ。

一同:おしゃれなとこから!笑

服部さん:南山城村は眺めが良いです。都市部の建造物など邪魔なものが目に入らない。木津川の眺めも良いですよね。

宮本さん(神戸からの参加):そう、こういう山間地の方がシュッとしてて、なんか、こっちは景色になりやすいですよね。川沿いにゆっくり向かう感じとか良くて。

山田さん:神戸市は北区と西区が農村です。北区は山あり谷あり、西区は平野地でニュータウンが多く、何年か前に大型のショッピングセンターが増えました。そして中途半端に町が大きくて交通量が多い、それが今は住みにくさを生んでいる。それで環境を戻そうとする動きもありつつ、同時に開発しようとする業者もいて。今はそのせめぎあいの時代かなと。サンフランシスコはスラムの横に自然栽培の農園があって。神戸でもまちなか農園を進めています。田園風景を求めるんじゃなくて、まちなかに田園の空間や時間を持つツールとして畑があるんじゃないかな。

大皿さん:準農村、というか農村と都市のはざまにある地域が結構あって、開発途中で止まっているところとか。農村から都会に向かう道中のエリア、そういう町ってあまりきれいじゃないんですよね、中途半端で。私も移住先を探して西区も北区も廻ったんですが、あまり良い所がない。景色がね。南山城村は休耕田や放置森林があるといっても、全体としてはちゃんとされている。とにかく茶畑はめっちゃきれい。

宮本さん:ワインの産地にも盆地や平野など色んなタイプがあって、それがワインの個性に出るが、やっぱり大事なのはブドウ畑の構成の美しさ。それが飲んだワインから、その産地の景色が思い浮かぶような体験をしたことがあります。でも実は、神戸にも海外のような美しいワイン畑がある。切り取れば良い農村風景は神戸にもある。その良さを見せるまちづくりってどうやったらええの?

徳田さん(村役場):やっぱり、茶畑の風景って魅力的ですか?住んでると見慣れ過ぎて。

一同:もちろん!素晴らしいです。

服部さん:野生のワイルドな森も良いけど、関わっている人の手を感じる田舎っていい。その二つが共存しているから良いのかも。

神戸市の地域ブランドは何があるのか??

山田さん:神戸市の人が消費する野菜の量と生産している野菜の量を比べると自給率は15%くらいです。それだけしか野菜を賄えていないんです。

宮本さん:8つのインポート社と共に、トップクラスのレストランさんに向けてバルを開いたんです。その時にどこのレストランも野菜を地元では確保できていないことが分かりました。500人のお客さんに対して出す時に確保できるかというと難しかったんです。意外と流通がないことに驚きました。

服部さん:生活のための野菜は作れているけど、地域に特質した野菜、神戸ならではの野菜は作りにくいのかな?

山田さん:生産者それぞれに代表作物はあって、原木椎茸やってる農家さんもいますよ。でも、神戸全体でというのはない。

宮本さん:神戸牛は完全に外向けに作られていて、地元では出回らないから、神戸の人は食べてません。特殊なものを作っても、一般の人が消費できるものでなければ意味ないよねって思うんです、ブランド化しても外に向けての発信だけではね。

田邊さん:道の駅は「村」を全面に押し出していますが、これには理由があって。南山城村は京都唯一の村。でも地元の人にはコンプレックスで、京都府唯一というより、京都府の最下層が「村」みたいな。地元の人に聞いた話で、村の人が京都市内にスーツを買いに言ったら、顧客名簿に「南山城町」と書くんです、村であることを恥ずかしいと。だからあえて外からの目線で「村」を推しています。

服部さん:自分達で「村」推しするって決めたことが大事だったんじゃないかな、自分達で村っていいよねって言うってことが。それが目に見える形でいいものになってる。例えば神戸=おしゃれっていうなら、「じゃあ、おしゃれってほんまは何なん?」って議論することが大事じゃないかな。おしゃれに関する時代を遡っていったり、西洋の物も東洋の物も全部掛け合わされていることに着目するとか。おしゃれの本質みたいなところがあるんですよね。それを使いまわすのが実は神戸なんだよって言えた時の強さの方がいいはずなんですよね。

宮本さん:おしゃれに乗るんじゃなくて、価値を再構築することが大事なのかも。おしゃれなイベントのパッケージをつくるのも難しくないし発信もできるけど、その中身にあるストーリー性をちゃんとメイクできた方が、結果来た人がそこにアクセスできて感じ取って持ち帰って継続するんじゃないかなって。

高畑さん(神戸からの参加者):神戸の「おしゃれ」は当時、神戸に住み始めた外国人と日本人との交流から生まれた生活文化のことを言うんですよね。ワインとかパンとかバターとかオリーブとかは神戸が一番に来てる。登山の習慣も。神戸の人には、それを受け入れる心の寛容さがあったんですね。最初は神戸のいなみ町にワインが入ってきて国営の農園が出来たんです、神戸オリーブ園も日本初の開園で。

南山城村に移住を希望する方が多いのは?

楠瀬さん:村への移住希望は10年ほど前から継続して増加しています。最近は20代の方が増えてきて、彼らは純粋に子育て環境を求めていたり、自然と共にある暮らしを求めています。特に子育て支援に特化している訳ではないですが。でも、紹介できる空き家がなかなか無いのが現状です。空き家バンクに載せても、2~3か月以内で契約が決まります。

徳田さん:役場としてはニュータウンに住める村営住宅を建てようとしていますが、移住希望の方は古民家を求めています。

山田さん:紹介できる空き家が無いのは神戸市も同じですね。空家は多いけど所有者に聞くと、まだ使っているからと言われるんですよ。住んでないけど盆と正月だけ使うっていう。また空家ではないけれどお年寄りが一人で住んでいる一軒家の部屋を間借りしている人もなかにはいますね。

楠瀬さん:実際にそうして移住した方もいますが、特殊な例です。行政的に推し進めるにはリスクが多いですね。

服部さん:空家になる前に、離れをシェアするっていいよね。

山田さん:昔は下宿って恥ずかしいみたいな、でも視点変えると下宿良いよねって。

宮本さん:じゃあこれからは「おしゃれ下宿」でいきましょうか 笑

山のテーブルでの交流会では、村民の方も入れ替わり立ち代わり多くの方が参加し、深い交流会になりました。神戸の農家さんと南山城村の農家さんとの交流や、村内の作家さんの作品を服部さんが講評する機会も。長年暮らすことで普段気付きにくくなっている地域の魅力。それを視点や話す相手を変えることで様々な価値に気付くきっかけとなりました。