(ライブハウスの出会いから25年、ジビエと農のキーマンに)

種はおよぐでは、食と里をつなぐというテーマで、これまで農家の仕事内容やどうやって農家になるのかを取材してきました。しかし、一次産業は農家だけにあらず!イマイチ想像ができないいくつかの職について、お仕事の内容や、どうやったらその仕事に就けるのかを調べてみることに。今回は鹿や猪などを獲る猟師さんです。けれど、猟師になるならないの前に、もっと大切な知ってほしいことがたくさん。今回は、神戸でジビエの提供と鹿革の商品開発に取り組む、ひょうごニホンジカ推進ネットワーク会長の入舩郁也さんにお話を伺いました。

皮の活用から肉へ。

鶴巻さん(兼業農家):今日はよろしくお願いします。神戸市で農業をしている大皿さんと私、ウェブデザイナーの多々良さんの3人でお話をお聞きしたいと思います。入舩さんと大皿さんは古くからのお知り合い?

入舩さん:大皿さんは…若かりし頃バンドマンで…これ大丈夫なんですよね?(笑) 神戸のライブハウスを中心に演奏していて、アマチュアのレベルを越えていました。

大皿さん(有機農家):いやいやそんな(照)

鶴巻さん:まじですか!?

入舩さん:一ファンとして、聴きに行く関係の中からお付き合いが始まりました。

大皿さん:当時のギターが入社した会社に入舩さんもいたのよ。

鶴巻さん:世間は狭い…。ではそのあたりからお話聞いてもいいですか?

(入舩さん。元町にあるジビエの精肉店、ハイカラブルバードにて。)

入舩さん:私は神戸生まれで、就職も神戸のアパレルメーカーに。繊維から生地をつくる原糸の開発から、洋服などのプロダクトをつくる(※)企画MDという仕事をしていました。そこから独立しまして、今年(2024年)で24年目になります。

(※企画MD:アパレル業界における、商品の企画・開発、販売・サービスの計画立案、価格設定、予算管理などを専門とする職種)

鶴巻さん:アパレルから、食品やジビエという方向に?

入舩さん:アパレルは、動物の革を使って洋服をつくりますよね。ボタンや付属品をつくれないかなというところが関わるきっかけです。例えば姫路市には、市川という川のバクテリアで鹿皮を(※)鞣す製法があり、江戸時代よりも前から生産されていることを知りました。古来から日本人が行ってきたことを、どうにか自身のアパレルに落とし込めないかなというのが鹿や猪との接点でした。

(※鞣(なめ)す 毛皮の毛を取り、脂肪を取り除いて、柔らかくすること。)

多々良さん(ウェブデザイナー):そうやってつながるんですね。そうした活動は個人でされていたんですか?

入舩さん:そうですね、その当時はもう独立していました。自分自身がつくりたいものをつくって、世の中に発信できないかなと模索していました。そうした中、野生の鹿革を用いてボタンをつくるような流れの中で、山のことを知るようになっていきました。

(鹿革のボタン)

鶴巻さん:そうなると、必然的に革だけでなくお肉のことも知るようになったんですね。

入舩さん:はい。革を取り扱う中で、そこには肉があって、「この肉どうするんですか?」みたいな話をするわけです。売り先がないとか、農産物を食べ散らかす害獣なんやとか、様々な問題を聞くようになりました。溺れている人がいる状態で、そのままにすることはできませんよね。助けを呼びに行くのか、直接手を貸すのかみたいな話の中で、僕の場合は革もやっていて小売も持ってたので、自分のところで何かできないかなというのがきっかけでした。

自分が猟師になるだけでは、解決できないこと。

鶴巻さん:最初の想定としては、入舩さんが猟師になるのではなくて、既に獲っている人たちのお肉をどう活用しようかというのが出発点だったんですか?

入舩さん:いやもうね、やっぱりみなさんと一緒で、銃とか罠とか興味ありましたよ。当然私も第一種銃猟とわな免許を取得しておりましたので。ただ、踏み込めば踏み込むほど、自分が猟師になって、自家消費して成り立つような状況じゃないことが分かりました。ある処理施設では、もう本当に天井に届くほどの鹿が運ばれてくるんです。50頭、60頭です。それを1人の方が朝早くから処理している。それを横目で見て、その人を残して車で帰るのも忍びないんです…。これ、夜中の0時を過ぎるやろなと。

多々良さん:それは1日に運ばれてくる頭数の話ですか。

入舩さん:そうです。これってどうにかならないのかなと思いました。とはいえ、明日も同じだけ入ってくるのであれば、行政にも相談しながら人も雇って施設も大きくしてってこともできますけど、野生はそういうわけにはいかないんです。明日は0頭かもわからない。人件費をかけて、解体できる人を待機させながら入ってくるか分からない商材を待つことはできないですよね。

鶴巻さん:確かに…。

入舩さん:なんでそんなことになるのかというと、捕獲報奨金というのがあって、捕えて持っていくと、お金をもらえます。少し言い方は悪いかもしれませんが、お金目的なのか、農作物を守るための駆除的な目的なのか、人によって捉え方が違います。職業としての猟師さんから、ハンターという趣味の1つとして銃も保持している方まで、多岐に渡るのがまた事を難しくしているなという感覚はあります。

鶴巻さん:なんだか農業の世界にもある、仕事なのか趣味的なのかっていうところと似てますね。

大皿さん:うん、似てる。

入舩さん:そうしたいろんな状況を見た時に、自分の役割としては川上よりも、川中から川下―つまり流通から出口に至るまでをつくることじゃないかと。まだまだ無知でしたが、お金も借りて、ここに取り組み始めました。

大皿さん:鹿とか猪って、質が良ければ取り扱ってくれるレストランとか多そうやから、流通をきちっとしたらなんとかなりそうな気もするけど?

入舩さん:例えばジビエを謳うレストランで、牛豚鶏の中に鹿も使っていただけますが、月に5キロ以上も仕入れるところはまだまだ少ないです。ジビエ料理店とはいえ、海外の輸入肉、つまり安価な家畜のお肉が中心です。利益や安定供給、自身の冷凍庫スペースを考えると、いつ注文が入るか分からないお肉を在庫としてストックしておけないというわけです。それは当然で、市場がそこまで大きくないので、メインディッシュに牛豚鶏、鹿もありますとなった時に、現状鹿はなかなか選ばないですよね。さらにそれが天然なのか家畜の輸入肉なのか、北海道のエゾ鹿なのかという違いもあるのに、消費者は鹿とだけ捉えている状況です。革も同じで、(※)ディアースキンは解りますが、それが野生なのか家畜なのか国産なのか海外なのかと。そこを考えたときに、理解してもらえるもらえないに関係なく、地産地消という観点から県内の鹿肉だけのお店をつくろうと。立地も、田舎ではなくターミナルエリアにつくって、日常の中で仕事の帰りに気軽に立ち寄ってもらおうと思い、鹿肉専門レストランをつくりました。出口をつくらないと、流通できないので。

(※ディアースキン:鹿革の中でも特に柔らかくしなやかな感触のもの)

(東京に出店されたお店)

大皿さん:東京への出店が先だったんよね?

入舩さん:そうです。今から約20年前は、野生の鹿肉自体が出回ってないわけですから、比較の対象もなく値段の付け方も分からない。そうこうしてる間に、少しずつ食べてくれる人も増えてきて、安いだの高いだのというフィードバックを受ける中で、とりあえずはもうロープライスでやらないと駄目だろうと。さらには、イタリアンやフレンチではなく、日常の食卓に上がるような身近なものに落とし込まないといけないと思いました。その後、自分の生まれた神戸でやろうと決め、2013年の9月に鹿肉専門レストランを出しました。全国の料理人とかいろんな人が来てくれて、多くの関係者に支えられ、少しずつ広がっています。

野生の肉を取り扱うということ。

多々良さん:山の方の状況をもう少し詳しくお聞きしてもいいですか?鹿が1日に50~60頭集まってくるのは兵庫県内の話ですか?

入舩さん:はい。自家消費とは別に、処理施設があっても保健所の衛生許可を得た認定処理施設にならないと流通させられません。例えば親戚のおっちゃんにもらったからBarで出してみようというのはできないんです。施設の中には、猟師さんの団体の施設や、地域おこし協力隊として事業を始められた方もいて、中規模小規模のものが乱立しています。

(処理施設の様子)

鶴巻さん:施設自体はそれなりにあるんですね。

入舩さん:そこから想像できると思いますが、1日に1頭2頭のところで家計を支えていこうと思うと、解体処理の方法も変わってきます。丁寧に処理して、いろんな部位をお金に変えないといけません。さらにそこから7日間吊るして熟成肉にすることで、高付加価値を生み出すような形もあります。一方で、先ほどの1日50頭のところになると、とにかく腐る前に早く捌かないといけないので、ロースとモモといったお金になる部位を一気に外していって、残りはいわゆる産業廃棄物としてという形が普通の流れになります。ただこのような状況も、私自身も関わり十数年でだいぶ改善されたと思います。

(鹿肉の部位。)

大皿さん:人の食肉用途以外にも、ペットフードなどに加工するのをよく見かけますが。

入舩さん:ペットフードも今すごく人気ですが、当然大手の企業さんは仕入れ金額を押さえようとします。そういうことも踏まえると、人が奪う命であり、本来は食べてあげたいという気持ちも込めて、やはり食肉の方が収益事業としては大きくなってほしいです。ただ一方で、人相手の仕事はリスクも高いので、昨今は食肉よりもペットフードに力を入れてるところが現状では多いかもしれないですね。

多々良さん:兵庫県内で、特にたくさん鹿や猪がいるというエリアはあるんですか?

入舩さん:もう全域ですね。ほぼ全域を、私自身が冷凍車両で回ってお肉も皮も骨も回収しています。それを神戸市と姫路市にある私共の冷凍冷蔵保管庫の中に保管しています。その中には、一例として熟成肉として高付加価値を生み出すためのお肉と、一気にばらしたお肉など、様々なコンディションのものが来るわけですね。それをオーダーいただいたホテルであったり、イタリアン・フレンチであったり居酒屋さんであったり、いろんなところにアジャストして販売していきます。私の役割はそっちかなと思います。

鶴巻さん:すごい。そういう役割は本当に貴重ですね。

入舩さん:偉そうに言いながらですけど、このジビエ専門の精肉店も地代もいるし電気代もいるわけですよね。物流コストやアルバイトを雇うことで人件費もかかります。先ずは手にとって召し上がって頂く、もしくは店舗で兵庫県の野生鹿を活用して頂くため、安価で提供するために、私が店頭に立って休みの日にお肉を回収しています。

大皿さん:そうそう。僕らここに野菜納品してて、いつもこの場所に入舩さん座ってるのよ。

入舩さん:だから、儲かるかどうかと言われるとまだまだ途中の段階です。いわゆる0から1みたいな仕事ですよね。もう本当に足跡のない道を切り拓いていってるような感覚です。

猟師になるには?

鶴巻さん:ジビエの世界、知らないことばかりです。一応今回のテーマにも触れたいのですが、猟師になるにはどうしたらいいのですか?

入舩さん:狩猟免許には、網・わなと第一種銃猟(装薬銃・空気銃)第二種銃猟(空気銃)の4種類、大きく分けると罠と銃猟の2種類があります。免許を取得するにあたって、おそらく普通皆さんは罠なんてかけたことがないでしょうから、兵庫県は兵庫県(※)猟友会主催で狩猟免許試験予備講習会が行われています。また銃の組み立て方、扱い方も教えていただけます。それを踏まえて筆記と実地試験になります。また、第一種として装薬銃の猟銃なのか第二種として空気銃のみなのかを選択できます。第一種で最初の10年間は散弾銃になるので、それ以降はライフルに切り替えることもできたりと、経験によってできることが増えていきます。

(※猟友会:すべての都道府県に設置されている狩猟者を会員とする団体)

鶴巻さん:散弾銃ってどういう感じなんですか?あんまりイメージが…。

入舩さん:いわゆる撃った時に、弾がたくさん飛び散るっていうものです。撃ったら複数の弾が発射されます。問題なのは、その弾が時にお肉の中に入っていることなんですよ。

一同:そうかぁぁぁぁぁ。

入舩さん:そうなんです。例えばある処理施設が、「うちは罠だけのものなので、銃の弾丸(鉄の子弾)は大丈夫ですよ。」って言うんですけど、撃たれたものが生き残って逃げて、今度は罠にかかることもあります。なので、僕らは極細なものまで探知できる金属探知機を会社に導入しています。これが散弾銃の弾です。

(ライフル銃の薬莢(やっきょう)と、右の白い紙の上にあるのが散弾銃の弾。)

大皿さん:小さいな…。小石みたい。

入舩さん:我々兵庫県下のある市全域小中学校の学校給食7000食分のジビエ食材を用意させてもらったりしているのですが、これが出てきたら大変なことなります。

大皿さん:なりますよね。

入舩さん:ミンチにしたものに混ざっているなどの可能性が出てしまいます。野生はそれぐらいリスクなんですよ。野生のものを取り扱うのは大変です。

鶴巻さん:免許を取得したら、どの山に入るかは自分で選べるんですか?

入舩さん:そうですね。これはアドバイスですけど、やっぱり町々村々には色々とありますので、住まれている方の意見を聞きながら同行するのが一番だと思います。猟友会に入る入らないは個人の自由ですが、私の意見としては入った方がいいと思います。人間関係もありますし、自分に合うと思えばご参加いただければいいのかなと。基本はお住まいのエリアの猟友会へ、特例で他の支部へ参加されている方もいらっしゃいます。

鶴巻さん:猟友会は、法的に認められているものなんですか?

入舩さん:任意団体です。大日本猟友会がありまして、県猟と呼ばれる県の猟友会があり、そこから地域にそれぞれの支部があります。

鶴巻さん:例えば都会にお住いの方で、山に鹿や猪が多くて農作物が大変だという課題を知り、その人が副業猟師のようになり山に入ることは、そうした課題の解決に繋がるものですか?

入舩さん:これもあくまで私的な意見ですが、簡単に言うと、綺麗な仕事じゃないんです。生きている命を奪うということですから、仮に罠で捕まえても、止め刺しをしないといけません。数日であればできるかもしれませんが、3年続けられるかいうと、肉体的にも精神的にもしんどいです。一頭やって終わりという方が多いですね。

(猟の様子)

大皿さん:しんどいと思います。

入舩さん:亡くなったものに対しては無機質なものやから捌くことができるかもしれないですが、楽な仕事ではないというか、その割にお金がいいわけでもなく、そこも難しいところかなと思います。

大皿さん:知り合いの農家さんで、冬の間に自分たちの作物を守るために猟をやっている人がいます。SNSでウリ坊(幼い猪)を捌いたものを載せたら大炎上してて。かわいそうやと。けど農家からしたら、小さい内に駆除しないとだめなんやと。消費者やそういうことにあまり関係ない人は小さいからかわいそうってなるよね。

入舩さん:あまりニュースにはなりませんが、人を撃ってしまう誤射などもあります。危険なものを扱うということはそういうことですよね。全てにおいて、リスクが伴ってくる。

大皿さん:林業とかも危なくてすごく大変な産業だと聞くけど、お金が回らないと。猟師さんもそういう側面があるし、なかなか1次産業は厳しいよね。

入舩さん:でも全く潤っていないかって言ったらそんなこともなくて、ごく一部ですがしっかりと稼いでいらっしゃる方もいます。だけど、そういう方向だけ見てしまうと、動物は絶滅に向かうじゃないですか。昔のミンクのコートと一緒で、乱獲したらいなくなってしまいます。逆に増えすぎたら今度は餌がなくなってそれも絶滅に向かいます。だから僕ら人間が関与して、適正な数に頭数調整するというのが自然との関わり合いなのではないでしょうか。お金が前に来ると、今度は飼育して…っていう方向になってくるので、自然のものを獲って流通させることと種類が違うのかもしれません。順番でいうと、奪ってしまった命をきちんと食べてあげようよっていう感覚の方に近いかもしれませんね。

野生動物の状況と、神戸はどうするか。

大皿さん:鹿とか猪って増えてるんですよね?増えている原因っていろんな人がいろんなこと言ってるけど、入舩さんとしてはどう思いますか?

入舩さん:学者の方は、いや減ってるよって言います。実際、兵庫県でも減っているという声もあります。鹿でいくと、令和3年度の県内で年間48611頭獲られていますが、実際に20万頭ぐらいいるはずです。

鶴巻さん:県内に20万頭もいるんですか!?

入舩さん:はい、いるんです。これまでよく獲れた地域の人に聞くと、いなくなったねとか獲れなくなったねというのもあるんです。でも、彼らも生きているので、撃ちやすいところや捕まりやすいところは、仲間が捉えられたら分かりますよね。違うエリアに移動しているということもあります。

鶴巻さん:そうか、神戸でも最近鹿が発見された云々も、近隣市町で増えすぎたから来たわけでなく、移動してきたという捉え方なんですね。

入舩さん:様々な方法で頭数をカウントしていますが、やっぱり生命力もすごいので、増えているところもあると思います。なぜかというと、どんどん過疎化しているので、人間がいて危ないエリアだと思われなくなっている。境目がなくなってきているのもあるかもしれません。

大皿さん:以前は棲み分けできていたものが、人間の数が減ってきたことによってできなくなっていると。

入舩さん:その可能性はあります。

鶴巻さん:被害が出るから増えたと思ってしまうのですが、境界が迫ってきているだけということなんですかね。

大皿さん:山のバランスはそんなに変わってないのかもしれないね。

入舩さん:あとはやっぱ暖冬もあるでしょう。本来は食べものがなくなって一定数自然死していたものが、越冬できてしまう。でも北海道などと比べると、兵庫県の鹿肉の旨味成分は高いんです。なぜかというと、気候がいいですから美味しい野菜などを年中食べているわけです。

(入舩さんのお店にも、たくさんの鹿肉や猪肉が並ぶ。)

鶴巻さん:早速今日買って帰ります!少し神戸の方にも目を移すと、神戸の山間部は現状猪の被害が大きく、僕が移り住んだこの10年でも、猪用の電柵が至る所に張り巡らされました。とはいえ、数でいくと認定の処理場をつくるほどではないですか?

入舩さん:神戸市さんと意見交換する時があります。私自身も猪があれだけいるのを危惧しています。この先、神戸市につくるという可能性もあると思います。だけど、本当に街と自然が近いエリアなので、何より臭いなどの苦情や、搬入もトラックに積んで来ますから目に見えます。そういうハードルはありますね。

大皿さん:確かになぁ。

入舩さん:あとは、きちんと収益事業にできるかということです。いわゆる産業廃棄物として、残ったものの処理に例えば毎月50万払っていたら利益が全部飛んでしまいます。人件費と処理代に全部取られていくと、事業として成り立たない。(※)減容化施設も臭いの問題がありますし。

(※減容化:廃棄物などの容積を減少させること。)

鶴巻さん:場所のこと、経営面のこと、まだまだ一足飛びにはできなさそうですね。

入舩さん:勝手ながらいろいろ言ってしまいましたが、要は食べてほしいものなので、純粋に、一周回すという感じですね。続けていくためにお金儲けも大切なのですが、循環していって消化していくような感覚のビジネスに近いかもですね。

鶴巻さん:ありがとうございました。最後になりますが、最初、鹿の皮がボタンに使えないかってところから入っていった入舩さんが、今どんなことを思われているか教えていただけますか。

入舩さん:すごくミニマムな事業なんだと思います、本当に。個々の農家さんもきっとそうですよね。それぞれは小さい声ですけれど、それを集めながらやっていかないといけないような取り組みなんだろうなと思います。自分の処理施設が大きいからっていうことじゃなくて、自然相手だということを意識しないといけません。車のハンドルみたいなもので、切りすぎると大事故になります。遊びというか、幅を持たせながら、ちょっと余裕を持って、ああでもないこうでもないと考えながら進めないといけないような気がしますよね。

文:鶴巻耕介
写真:多々良直治
※一部写真は入舩さんより提供いただきました。