種はおよぐでは、食と里をつなぐきっかけづくりを発信しています。生産者と消費者の関係、食材の買い方…、持続可能な食環境を維持していくために、今回はひとつの仮説を記事にしてみました。それは、「あるもんでつくる」ということです。近くにスーパーや商店街がある生活はとても便利です。一方で、野菜や魚などの食材は自然のものなので、本来は安定的な供給が難しいものでもあります。先にレシピを決めて買い出しに行くだけでなく、旬の食材を中心に購入し、家にあるもので献立を考える。そんな生活スタイルも見直されていくといいなと思い、今回は3世帯のみなさんの様子を教えてもらいました。

素材そのものを、シンプルにいただきたい。

まずは、垂水区で暮らしと食のお店を営む森本さん一家の食卓の様子です。

森本家は5人家族です。子ども達が食べたり食べなかったりで、基本は3〜4人前をつくります。今回は、週末に参加した有機農業のイベントで、お野菜をまとめて買わせてもらいました。

1日目(12月上旬)

レッドココナッツクリームカレー。大根丸ごと1本、黒大根、手羽先とタイハーブたっぷりと合わせました。ちょうどタイから帰ってきてすぐの週でもあり、この時期の立派な大根と目が合うと決まってカレーに投入したくなり、おでん風に分厚くカットして!
そしてリーフサラダ。冷蔵庫に常備しているちりめんじゃこ、ごま油と合わせた簡単サラダです。

2日目

里芋、新生姜炊き込みご飯。こちらは、ナチュラリズムファームの麹を塩と合わせて寝かせた塩麹を常備しているので、ひと匙加えて炊き合わせます。ふわっと素材が柔らかく、少しの調味料でコクも出ます。炊き込みご飯にほんの少しの塩麹おすすめです。

ぶりと長ネギ、赤ネギのソテーと、大根と葉大根の味噌汁。

3日目

人参丸ごとかき揚げ。こちらも立派な葉付き人参のこの時期には必ずこのメニュー!ナチュラリズムファームの米粉と合わせて…。
さつまいもとパクチーのかき揚げ。どちらのかき揚げも仕上げにクミン塩、柑橘をぎゅぎゅっと回しかけて…ビールがすすみます!笑

4日目と続きたいところでしたが、お野菜全て使い果たしましたので終了となっちゃいました。いつも気にかけていることは、とにかく想いが通い合える生産者の方々の愛おしいお野菜は、素材そのものがまるっと満ち満ちているので、信頼ある調味料や自家製調味料と合わせてシンプルに頂きます。
それが何よりのご馳走だと思ってます。
この度も美味しく頂きました。ありがとうございました。

やってみたら、結構できるやん!

続いては、垂水区塩屋にお住まいで、編集や音楽関係の仕事をしている和田さん一家の食卓の様子です。

1日目(12月上旬)

冷蔵庫に残っていた野菜(右)と、届いたばかりの(※)CSAの野菜たち(左)。
(※CSA:消費者が生産者に代金を前払いして、定期的に作物を受け取る契約を結ぶ農業の仕組み)

まずは残りの野菜を使い切らねば。小さなパプリカとピーマンに焦げ目をつけたものと、ししゃもをフライパンで焼いたものを液につけて南蛮漬け風。パプリカとピーマンが肉厚&濃厚で、ししゃもより野菜が主役のメインディッシュに。
ネギで冷蔵庫の卵やハムで焼きめし、にんじんとネギのスープ、カブだと勘違いしていた黒丸大根と小松菜でグラタン風。レタスはちぎってそのまま食べる。3歳の娘が、普段は食べないパプリカを何度もおかわりしていた。

(1日空いて)3日目

CSAの農家である、石野さんの白菜で豚肉の重ね煮、黒丸大根をバターオイルでソテーしたもの、メインは赤えいの照り焼き。黒丸大根は苦味が際立ってしまった。少し茹でてから焼くべきだったのか。味付けもオリーブオイルと塩でもっとシンプルで良かったのかも?でもこれはこれでワイルドで良い。白菜はスーパーで買うものと違って、なんというか、ちゃんと菜葉の味がした。

4日目

お昼はCSAの玉ねぎとピーマン、冷蔵庫に残っていたソーセージとマッシュルームを使ってナポリタン。適当に作ったけど、玉ねぎの甘味がきいていて箸がすすむ。

夜は残っていたじゃがいも、CSAのにんじんと玉ねぎを使って普通の家カレー。ベビーリーフはさっと洗ってお皿に乗っけるだけで簡単にサラダを作れちゃうからほんと便利。
今晩はワンオペ育児につき、まな板と包丁を出すのすらもう面倒だったので、ゆで卵は皮をむいてそのままお皿にのせる。なんと大ざっぱな。

5日目

今日は鍋。CSAの葉付き玉ねぎ丸ごと、白菜、なめこ、はるさめ、鶏もも肉。水炊きに飽きてきたので鶏ガラスープで味付け。
白ネギが高くて買うのを躊躇していたところだったので、葉も美味しそうな玉ねぎを丸ごと投入。
娘は野菜はあまり食べないが、無類の春雨好きなので春雨と白飯が本日のメイン。

6日目

CSA農家の丸山さんの大根は、どうーーーしてもおでんで食べたくて、夫にリクエスト。「鍋とおでんがおいしい季節になってまいりました。冬の大根は堪りませんね。大根菜も一緒に入れてしまうと菜にも味がしっかり染みて美味しいです。」と、夫からよそよしいコメント。
余談だが、夫がいるとほぼ100%、我が家の食卓には酒のアテの“刺身”が並ぶ。本日はいさき。

(夫コメント)
昔、体調を崩した時にヒシヒシと感じたのは食と睡眠の大切さでした。以来、どんな忙しい時も焼き魚とご飯だけでも自炊する事を心掛けています。日々に忙殺されていると買い物も楽ではないので、こんな都会(というほど、私の住む塩屋は街中でもありませんが)で新鮮な野菜を配達してもらえるとはほんといい時代になったものです。ありがたやありがたや。グラッツェグラッツェ。ヤーマンヤーマン。

(妻コメント)
夫婦のうち、その日できる方がごはんを作るのが我が家のスタイル(そこにときどき義母も参戦)。しかし、私たち夫婦はあるもんで作ることはさほど得意ではない。でも今回やってみて思ったのは、けっこうできるやん!黒丸大根めっちゃ味しみておいしいなぁ!冷蔵庫の野菜がみるみるなくなっていくのん気持ちいいなぁ!ということでした。味が濃くて分厚い野菜は、焼いたり茹でたりするだけで満足感のある一品になりますね。

できるだけ余す所なく使ってやるんだ!という気持ちで料理する。

最後は、長田区にお住まいで、通信販売の仕事やカメラマンの仕事をしている共働きご夫婦、永井さん一家の食卓の様子です。

1日目(1月上旬)

水菜と豚肉のハリハリ鍋。平日は仕事が終わった22時ごろから食事を始めることが多い。今夜はCSAで届いた水菜がたくさんあったので、水菜と豚肉のハリハリ鍋に。豚肉はすぐ近くにある幸山商店で買った神戸ポーク、ちょっと前のCSAで届いた柑橘があまっていたので、少しポン酢にいれて、爽やかに野菜も豚肉もいただく。
ビタミンをたくさんとって、明日も頑張るための食事。

(2日空いて)4日目

冬野菜の玄米雑炊。少し二日酔い気味に目が覚めた日曜日の朝。あまり何も食べる気になれないところだけど、CSAでとどいた野菜の旨味がしっかり出たこの雑炊。大根、人参、にんにく、生姜、新葉付き玉ねぎの葉、みさきキャベツ。沢山の野菜が二日酔いでまどろんだ体を起こしていく。
休みをゆっくり満喫する食事。

(まさかの5日空いて)10日目

カラフルラディッシュの塩昆布ナムルとミニチンゲンサイのオイル蒸し焼き、他。年末から続いていたどたばたした日常が落ち着いたように感じる週末。CSAで届いていたいろいろな野菜を美味しく料理する。
カラフルラディッシュは塩昆布と和えてナムルに。わさび菜と人参はさっと茹で、漁師さんにいただいた海苔で和えて。かぼちゃは新玉ねぎと一緒にグラタン風に焼き上げる。ミニチンゲンサイはにんにくとオイルで蒸し焼きにして、長芋(もしくは自然薯と書かれていた)はステーキ風で、最後に、神戸ポークのハラミをスパイスで焼いた。
忙しい日にはできないメニュー。野菜を美味しくいただく食事。

(1日空いて)12日目

週末に買っておいたマルヨネ(長田の多文化を象徴するような精肉店)のお肉とレタスなどをさらっと洗って焼肉に。週の初めから焼肉?という感じだけど、寒さがくるらしい今週を乗り切るために。
パワーアップするための食事。

CSAを取り始めて2年目。届く野菜をみながら、足りないものを買っていく。CSAで届く野菜が中心になっている我が家の冷蔵庫。野菜一つ一つを誰が作っているのか、顔も、声も、浮かんでくる食卓。シンプルな料理でもとても味わい深い。
ここまで書きましたが、料理もCSAのピックアップも全て奥さんが担当。あまり偉そうに書くと怒られそうなので、以下は奥様からのメッセージです。

家でご飯を食べるときは、できるだけ野菜をたくさん食べたい!肉や魚のタンパク質と季節の野菜をバランスよく食べられる料理を心がけています。
CSAは自分ではなかなか選ばない野菜、スーパーには並んでいない野菜と出会えるのが楽しみ。新鮮な野菜を届けてもらっているので、日持ちするのもありがたい!
味が濃くてはっきりしている野菜ばかりなので、その野菜の持つ個性を活かしつつ、できるだけ余す所なく使ってやるんだ!という気持ちで料理するのは、仕事と家事でバタバタしている中でリフレッシュできる貴重な時間。
ちなみに、週末のブランチは高頻度で野菜雑炊をリクエストされます。

農家は、自動あるもんで?

みなさま、食卓の様子を教えていただきありがとうございました。編集していてほっこりなった、北区の兼業農家の鶴巻でございます。私も農家の端くれとして約8年、販売用の野菜の他、畑の隅で自分で食べる程度の野菜をつくっているのですが、料理習慣が一変しました。特に夏の時期などは、次から次へと野菜が収穫できるので、せっかくつくったのだから食べてあげないと!というモードになります。麻婆豆腐を食べたくても、味の脳内リクエストだけを叶え、やっぱり麻婆茄子になります。そして麻婆キュウリとか麻婆ゴーヤもいけるのではないかとイノベーションの種が展開していきます。漬けることによって食べられる期間を伸ばすという手段は、先人やっぱりすごいぜ!と感じます。古来より、身の回りにあるもので何とかしていく、獲りすぎないというサイクルが、次の世代に適切な環境を残していたのかもしれません。と偉そうなことを書きましたが、やっぱり三ノ宮という都に出た際には、ラーメン屋やMの文字を持つハンバーガー屋に吸い込まれていきます。採れたて野菜とはまた別の幸福感に満ちます。便利さや個々人の嗜好、環境を考えながら、少しずつバランスを整えていける時代になるといいなと思いました。

編集:鶴巻耕介