〈種はおよぐ〉プロジェクト、食と里をつなぐ種を見つけ出すリサーチプログラム第3弾は、淡河の竹の利活用に取り組む「淡河バンブープロジェクト」についてお伺いしました。

放置された竹やぶは景観を悪くするだけでなく、獣害の温床になったり、自然災害のリスクを高めたり、多くの悪影響があるようです。淡河バンブープロジェクトでは、そんな竹を資源として活用するために、竹を使った食品加工としてメンマ、暮らしに必要なものとしてザルやかごを作る竹細工の活動を進めています。

メンバーが訪れたのは淡河町にある淡河宿本陣跡。江戸時代には、参勤交代の大名も利用したとされる由緒ある建物です。50年以上空き家となっていたのを地域の有志の方々が保存会を立ち上げ、掃除やイベントを開催。今ではカフェ、雑貨屋、レンタルスペース、駄菓子屋、ギャラリーなど様々に利用されています。私たちは、この場所で月2回されている淡河バンブープロジェクト竹細工同好会の終了後にお邪魔してきました。

お話を伺ったのは、バンブープロジェクトのお世話をされている武野さん、料理研究家として活動しながら、竹細工同好会を開催されている安藤さん、実際に竹林を保有している北野さんです。

若い人の仕事を生み出すためのバンブープロジェクト

北野さん:最初は、地元の若い子育て世代の人が働ける仕事がないかを探していて。たまたま去年の春に『現代農業』という雑誌に、糸島メンマの記事が出ていたんです。それを見て、メンマ作りって面白そうと感じたのがきっかけで、プロジェクトが動き出しました。

武野さん:大きなプロジェクトをしようとしているのではなく、お母さんの内職を作りたいなって。ここに来ているお母さんたちには大豆の選別などもしてもらってて。そういった活動の一つとして、メンマ作りをしたらいいんちゃうかなって。そのためにメンマや竹をもっと知ろうとなったことが、バンブープロジェクトの活動につながっていきました。

安藤さん:私は街に住んでいるのですが、里山には竹も含めて、野草など宝物がたくさんあると感じていました。でも、地元ではそういった宝物が見過ごされている。ずっと地元にいると気づかないけど、外から見ると魅力的なものがある。そんなすれ違いをバンブープロジェクトで活かせたらいいのかなと思っています。

農家である北野さん、子育て支援やカフェの運営をしている武野さん、元町で食のセレクトショップを運営している安藤さんのそれぞれ異なる視点から、バンブープロジェクトが動き出し、いろんな方との繋がりが生まれていっているようです。また、広島で開催されていた純国産メンマサミット(!?)にも参加されて、メンマのレシピ、作り方を取り入れながら進めています。さらに2020年2月には、福岡県糸島で純国産メンマ作りをされている日高栄治さんを招いてトークショー、メンマを使ったおかず、竹筒炊飯など盛りだくさんの「竹フェス」を開催し、地域の方々だけでなく、都市部に住む方たちへも魅力を伝える活動を展開しています。

竹を使って、楽しむことで仲間を増やしていく

武野さん:今は楽しんで、竹のことを学びながら活動しています。1ヶ月に1回、このメンバーで集まって、次はこんなことしてみようとか、話し合っています。1ヶ月に1度会うということも別に決めている訳じゃないんです(笑)。興味ある人がいたらその都度お声がけして少しずつ仲間を増やしていっています。

ここで、カフェで働くママのお二人が登場。竹を割って茹でたり、調理したりとメンマ作り、メンマ料理の開発に関わってきたそう。お二人のアイデアで作られた料理は、メンマラーメン、肉味噌メンマ、メンマと野菜とカレー炒めなど多岐にわたります。お聞きすると一番のオススメは肉味噌メンマとのこと。春に味わうのが楽しみになりました。

感想をママのお一人、辻野さんにお伺いしました。

辻野さん:メンマを作ったのは去年が初めてです。竹を包丁で切れることに驚きましたね。一番オススメの肉味噌メンマは、黒豆味噌という淡河で作っているお味噌を使っています。淡河の竹と味噌との奇跡の融合でした(笑)。甘辛い感じでお酒にもご飯にもぴったりです。

北野さん:今年は瓶詰めして売ったりできたらいいね。

武野さん:瓶詰めとなるとラベルのデザインなどを考えないといけないけど、そういったノウハウがないんです。情報をどうやって発信していくかなど、必要なことを改めて考えていかないといけないですね。

そこで、プロジェクトチームから、「ラベルなどのデザインをさせていただいて、どう告知していくか、ということもプランを作ることができると思います。」との提案がありました。クリエイターが培ってきたノウハウを生かして、竹やメンマの魅力を伝えるお手伝いができそうです。

〈種はおよぐ〉チームの関わり方が少し見えてきたところで、今後の活動の展望をお伺いしました。

北野さん:活動をどうやって継続するかが大事なポイントです。里山の資源は無くなるものじゃなくて、つながっていくもの。竹も一度切れば終わるものではなくて、来年も同じように生えてくる。だからこそ、それを活用してお金に変えていくことができれば、若い人の雇用も生まれて、活動を続けられると思っています。そのために大勢の方にも知恵を出してもらって、いい方法が見つかればいいかな、と。

武野さん:バンブーやメンマを通じて人の輪を広げていきたいです。竹には食べるもよし、遊ぶもよしと、いろんな魅力があるので、興味を持ってくれた人をもっと繋げる役割をしていきたいと思っています。それがいずれ、淡河への移住や、淡河に観光で訪れることにつながっていくと嬉しいですね。

安藤さん:今、里山で過ごしたいという方が増えてきていると思います。そういった方にもっと来てもらいたい。私自身、街よりも里山の方が好きで。メンマ作りや竹細工などから、竹林整備についても関心が高くなってきました。単に竹を編むことやイベントに参加して楽しむのではなく、竹を切り出すときやちょっと困りごとの時にも手伝いに来てくれる、そんな仲間づくりをしていきたいですね。

〈種はおよぐ〉のネットワーク、サイトやSNSを通して、竹の収穫時期などにサポーターを募集するなど、情報発信の部分でもクリエイターの力を活用できそうです。〈種はおよぐ〉プロジェクトとして、引き続き、情報発信も行なっていきますので、バンブープロジェクトにぜひご注目ください。