〈種はおよぐ〉プロジェクトチームが街を飛び出し、食と里をつなぐ種を見つけ出すリサーチプログラムが始動しました!北区や西区で今、動き出している取り組みにメンバーが参加し、クリエイターならではの視点からアイディアを出していきます。

第一弾となる今回は農村地域の「空き家活用」について、〈種はおよぐ〉プロジェクトがどのような関わりができるのかを探ります。プロジェクトメンバーが直接現場をみながらどのような困りごとや想いがあるかを聞いて意見交換するために、北区淡河町の空き家を訪れました。

かつての総合病院の跡地をどう地域のために活用していくか

〈種はおよぐ〉プロジェクトメンバーが訪れたのは、淡河町野瀬。好徳小学校のそばにある木造2階建ての大きな母屋と、2階建ての病院跡地の空き家です。ここを所有するのは北区在住の上垣内賢治さん。大阪市の高等学校の教師をしています。

「2年前に購入してからは、地域の方の声も聞きながら色々と試行錯誤しています。今は淡河BASE MATURIと名付けて活用方法を模索中です。規模が大きいので改修もできるところから手をつけているような状態です」

室内を案内してもらうと受付の表札や検査室など病院の名残があり、一部分は壁塗りや窓枠の付け替えなどの改修が始まっています。もう一つの母屋は、畳や備品など当時のまま、雨漏りなどで建物の傷みが激しく、さらに奥には別邸と庭もあります。

「ここはもともと松森医院という病院で、昭和4年に開業した大きな総合病院でした。もともと母屋が病院で多いときに80人も働いていたと聞いています。その後、昭和33年に別棟を建てて、3代病院が続いたあとは、36年ほど手付かずのまま放置されていました。道路の向かいにも入院病棟がありましたが、景観のこともあり取り壊しました」

2階の角部屋の窓からは、のどかな田園風景が見渡せます。このあたりはかつて淡河銀座通りと呼ばれた上淡河の中心地で、歴史ある石峯寺の門前町としても知られていました。

「なぜ購入したかと聞かれますが、ここに初めてきたときに建物が悲しんでいるように感じたんです。どうにかしてあげたいという思いに駆られて。これまでは学生や知人にも関わってもらいながら改修していますが、なんせ規模が大きくて…。」

上垣内さんは、病棟だった部屋を滞在の拠点にできないか、クリエイターのシェアオフィスのような場にできたらどうか、近隣の本陣や近隣の道の駅とも連携していきたいなど、アイデアを膨らませています。

地域のお母さんや神戸の内外から人が集い交流する場

「どう使うかよりも先に、だれが関わってくれるかが大事だと思っています。それによって改修や取り組みも変わってきますから。里づくりの拠点になって地域の人の交流の場にもつながるような、より良い活用方法のアイデアをいただきたいです」

いろいろとアイデアは浮かぶ一方、その整理ができていないこと、何より関わる人が大切だと話す上垣内さん。

「いま参考にしているのは、尾道のまるみデパートの取り組みです。もともと医院だった建物を改装してカフェやまちづくりの場になっています。ここは近所に小学校や児童館があるので、お母さんたちが気軽に集えるような場所ができたらいいなと思っています」

周辺の住民の暮らしのようすや地域の課題などについて意見を交換する中で、プロジェクトチームから一つの案が出ました。

「神戸のシェフがここに集まって、料理教室を開くようなシェフインレジデンスはどうでしょう?神戸市の内外からも人がきて、交流のきっかけにもなると思います。料理人や企画内容など〈種はおよぐ〉メンバーもキュレーションに関わって。食を軸にすると可能性が広がりそうです」

「地域のお母さんたちのセントラルキッチンとしての使い方もありますね。例えばジャムを作るためにここで集まって作って、近隣の道の駅で販売するような活用できるかも。この辺りはお年寄りも多いので、お弁当を作って販売するのもニーズがありそうです」

地域の人たちにも親しみのある「食」「キッチン」をキーワードにどんどんアイデアが生まれ、予定時間をオーバーして議論は白熱。上垣内さんは、プロジェクトメンバーからの意見を受けて、
「食をテーマにシェフのレジデンスはやってみたいです。食都神戸を進める神戸や地域のテーマでもありますし。セントラルキッチンも面白いと思うし、北区周辺の地域までターゲットにして特別なキッチンとして地域のお母さんたちに向けて展開してみたい。そういう可能性があることをお話を聞いて知れたので、これから〈種はおよぐ〉の皆さんに協力してもらいながら進めていきたいです」
今回の機会でこれまでのアイデアが整理できて幹ができたとのこと。

地域にもつながっていくためにも、仲間を集めながら種をまいて耕して、時間をかけて育てていくことが大切だと感じました。〈種はおよぐ〉プロジェクトとの関わりによっても、さらによい相乗効果が生まれていきそうです。これからの動きにぜひご期待ください!