〈種はおよぐ〉では、農村地域の課題を見つけ、課題の解決へのきっかけづくりや、解決に繋がるネットワークづくりを一緒に目指しています。
2020年6月の新聞記事に掲載がありましたが、農家の方が、酒米である山田錦の減産をせまられているそう。新型コロナウィルスの影響で、飲食店などでの飲み会がなくなり、日本酒と消費者が巡り合う機会も奪われているといいます。
今回、〈種はおよぐ〉で山田錦の生産者である坂井さんに、現状のお話をお聞きしました。


坂井さん:予期せぬ新型コロナウィルスで、こういうところまで、波及してくるとは思っていませんでした。

学校給食や観光農園に野菜を出荷していた農家の方々は、非常に打撃を受けています。外食が減ったので、一般消費者の方が、野菜を直売所で購入するなどの機会は増え、普通のうるち米は、今まで以上に売れました。米屋から一時、米がなくなったという時期もありました。(ちなみに米の在庫はあります。)

私は、当初、山田錦に影響があるとは思っていませんでした。まず、世界中で酒の輸出・輸入が止まっていきました。日本酒の作った量に対する輸出量は、全体の3%〜5%くらいです。量的には非常に少ないんです。そういう意味で、さほど影響はないと思うんです。
国内では、まず宴会がなくなった。それから飲食店が休業していった。日本酒の多くは、旅館やホテルなどで、半数近く消費されるんです。そういうところが休業してしまった。家でのリモート飲み会くらいでは、日本酒の消費量は少ないんです。

3月くらいから、我々のところにもチラホラと山田錦の減産の話が聞こえてきました。
山田錦は契約栽培をします。全国の酒造から、前年に、来年使う量を申し込みしてもらいます。それを取りまとめて、我々は概算で米作りをします。
国内のアルコール類は、焼酎、ビール、日本酒など、色々あります。
その年によって、ビールの消費が増える年、焼酎の消費が増える年、など波があります。
その波によって、酒米の作付を調整しています。酒米の王者と言われている山田錦の価格暴落となってはいけないので、需要と供給がうまく合うようにして、バランスをとっていかないといけません。そういう観点から、農家は作付を増やしたり、減らしたりと、取り組んできています。

平成14年までは、日本酒の需要が微増でした。平成14年から平成23年までは、需要が減っていきました。平成23年、山口県の大手酒造会社が、年中お酒を作れる酒造を作りました。その年から需要がグッと伸びていきました。平成28年くらいで頭打ち。今、需要が減ってきています。

新型コロナウィルスの影響は、世界的に、先が見えません。 3割くらいは、今年の酒米の予約からキャンセルが来ている。と聞かされています。

多々良さん:予約したのに、後からキャンセルしていいものなのでしょうか?

坂井さん:お酒の消費量が少ないと、酒蔵のタンクが空きません。酒蔵は、お酒を作って、ビンに詰めて、どんどん出荷しています。しかし、ビンが掃けていかないと、タンクのお酒が減っていかず、残ったままになります。今年の秋から仕込むにしても、タンクの空きができないと仕込めません。

6月に入り、ホテルや旅館なども営業をはじめ、消費の回復の兆しは見えるが、消費量がどこまで伸びていくかわかりません。酒蔵さんとの契約量は最終的に、6月・7月くらいに決まるかと思われます。6月のはじめから稲の植え付けはして、10月に収穫に入ります。今のところは順調に育っています。

取材の後、田んぼを見せていただきました。

我々にとっては、酒蔵さんの話を聞かせていただいて、作付の量を減らそうかという努力もさせていただきました。山田錦を多く作ってしまっても、在庫として残ります。農協の倉庫で1年間在庫として持っておかなければならず、保管料金など経費もかかります。
国や県になんとかしてほしいというお願いもしているところです。

また、少しでも酒屋さんを助けることで、お酒の取りまとめもしています。酒蔵さんも元気になっていただいたら、我々も元気になる。という取り組みもしています。

山田錦を使ったお酒は吟醸以上(大吟醸、純米など)のランクになり、冷やして飲むと美味しいんです。

鶴巻さん:坂井さんの農業において、山田錦の作付の割合は100%なのでしょうか?

坂井さん:私は多角経営しております。作付の3割くらいが山田錦になります。他にもいちご、一般的な野菜などを植えています。

鶴巻さん:山田錦を6割・7割くらいつくっている専業の農家さんって結構いらっしゃいますか?

坂井さん:いらっしゃいます。個人で多い方でしたら、400袋、500袋くらい出荷される方はいます。また、集落営農組織も結構できてきているので、何千袋と出す組織もあります。価格が、普通のうるち米と比べて、2倍近くになります。そこは、作りにくいながらも農家にとっては魅力です。 山田錦は酒米の王者と言われており、その酒米のランクは5段階あります。特上の評価を受けるのは兵庫県の一部の地域のみで、神戸の北区もこの地域に含まれています。

多々良さん:山田錦は、お米として食べたらおいしくないのでしょうか?

坂井さん:おいしくないです。普通のうるち米は、雑味などがあり、それが旨味になります。酒造りには、その雑味が邪魔になります。

多々良さん:現状、山田錦が余ったら、別の方法で消費するのでしょうか?

坂井さん:みなさん、色々考えてくれています。米粉にしたらどうですか?ということで、米粉パンなどにしているところもあります。ただ、使用量が少ないんです。400袋・500袋使うわけではないんです。山田錦を入れてビールをつくったりもしています。ビールの一番絞り・神戸づくりも山田錦を使っていただいている。ただ、やはり、使用量が少ないんです。

川崎さん:今回、用意した苗は植えることができたんですか?余ってしまった苗もありますか?

坂井さん:JA(農業協同組合)と一体となって、対応したので、苗をくばる前に対応できました。 苗は、おそらく、育苗センターに余っているんじゃないかと思います。

川崎さん:作ったお米が余ってしまうことはありますか?

坂井さん:一部、酒蔵では年中つくる酒蔵があります。樽を冷やしたり、倉庫に空調を入れて、できるようになってきています。普通、酒造りは、夏場は温度があがり、発酵などの調整が難しいので行いません。

昔から、早仕込みといって、9月から仕込みをする酒蔵がありました。
米を収穫できるのは10月なので、そういった酒蔵では、倉庫においていたお米を出してきて、9月から仕込みをするというところもあります。9月から仕込もうとすると、8月には精米しないといけません。早仕込み用には、前年度の米を使います。そういう酒造は結構あります。年中作る大手酒造は、いつでも醸造できるようにしています。

山内さん:坂井さんは、ずっと農業をされていたのですか?

坂井さん:60才まではJAで働いていて、土日などに農業をしていました。兼業農家というやつですね。

長坂さん:どぶろくをつくっている人はいますか?

坂井さん:いるかもしれませんが、少ないと思います。

山内さん:酒米の消費の大部分はお酒づくりということですか?

坂井さん:そうです。酒屋さんにがんばっていただきたいと思っています。

今回は酒米の生産現場の厳しい現状がひしひしと伝わってきました。その一方で山田錦を栽培している誇りがあり、「山田錦は日本酒になってこそ特長が発揮される」との言葉が印象的でした。今後も農家、酒蔵共にタグを組んで、山田錦のブランドを守っていく姿勢を感じました。 坂井さんにお話を聞いた後、実際にお酒を作られている神戸酒心館にも取材に行きました。次の記事でお伝えします。