食と里をつなぐネットワークとして主に農村地域と都市部をつなぐ活動をしてきた「種はおよぐ」。今回は、近年「夜明けのしらす」や「須磨海苔」などで、注目を集めている「漁業」にフォーカスを当ててお伝えします。お話を伺ったのは、東須磨地区で底びき網漁を営むベテラン漁師の幸内義宜さん。神戸の漁業の現状や漁れる魚の魅力などをお話しいただきました。
取材は局長で農家の大皿さん、ウェブデザイナーの多々良さん、料理研究家で「種はおよぐ」ニューメンバーの森本さん、そしてカメラマンの岩本さんというメンバーでした。

幸内さんについて教えてください!

2021年に駒ヶ林漁港で撮影したハモを持つ幸内さん

多々良さん・大皿さん・森本さん・岩本さん:本日はどうぞよろしくお願いします!

岩本さん:まずは幸内さんや底びき網漁について教えてください。幸内さんは代々漁師さんの家系なのですか?

幸内さん:叔父さんが漁師で、そのお手伝いを小さい時からしていて、そのまま漁師になりました。今で漁師になってだいたい30年くらい。ずっと一人で底びき網漁をしているので、気楽で良いですわ。

岩本さん:一人で漁に出られているということですけど、いつもどういう流れで漁をしていますか?

幸内さん:僕らがやっている底びき網漁では、だいたい夕方4時くらいから漁に出ますね。帰ってくるのは深夜2時くらい。海に沈めた網を漁船で引っ張って漁をします。40分に1回くらいの頻度で網を引き揚げるので、1日の漁で10回くらいは引き揚げますかね。引っ張るのは船やけど、体力いりますわ。引き上げた魚は都度バサっと船の上に出して、また網を海に投げ込んどいて、引っ張ってる間に魚の仕分けをします。漁から帰ってきたらそのままセリをする市場に持っていく準備をするんです。そんなこんなで一旦家に帰るのが3時くらい。6時ごろまで仮眠して、中央卸売市場と駒ヶ林魚市場の2箇所に分けて持って行っています。全部終わるのが9時ですかね。

駒ヶ林魚市場で魚を出荷する幸内さん

大皿さん:すごいハードな生活ですね。週に何回くらい漁に行かれるんですか?

幸内さん:週に5回行けたら御の字ですわ。最近は4回でもよう行ったなって。昔は寝なくても行けてたけど、年齢とともに行く日数が減ってきました。若い時は何もできないので手伝いばっかりして、ベテラン漁師に追いつくために必死で。追いつけ、追い越せって気持ちで、ちょっとでも長く漁に出てましたよ。でも練習して、慣れていくんですかね。今は短い時間で効率よく漁ができるようになりました。

岩本さん:今だと海を見て、ここに居そうとかがわかりますか?

幸内さん:どこの世界でもそうだと思いますけど、やっぱり経験で見えるものがありますよ。この時期はこの辺ちゃうかな、っていうのが自分の中でだいたい決まっているので、肌感覚でわかりますわ。

神戸で漁れる魚ってどんなの?

取材した日の朝、幸内さんが獲ってきたヒラメ

岩本さん:神戸が漁業で盛んだってことを知らない神戸市民も結構多いと感じていて、もっと発信していけたらと思うのですが、そもそも神戸ではどんな魚が漁れるんですか?

幸内さん:漁れる魚は年々変わってきてますけど、いろいろありますよ。カレイやヒラメ、チヌ(クロダイ)、タイ、スズキ、イカナゴ、エビ、アナゴ、タコ、シャコ、最近やったらハモなんかも漁れます。

大皿さん:昔と今で漁れる魚が変わってきたということですが、特徴的な魚ってありますか?

幸内さん:一番特徴的といえばハモですね。昔いなかったですから。6月中旬から夏にかけて出てきます。ハモは美味しいし、神戸の人にもどんどん食べてもらいたいけど、なんせ料理できる人がいない。普通の人はなかなかさばけないでしょう、僕もできません。昨年は神戸市さんに相談して、ありがたいことに食べ方やPRについて考えたりしてもらったんですけど、どうしても漁れる時と漁れない時のムラがあるのでなかなか難しかったですね。
あと増えた魚で言うと、ヒラメですね。兵庫県が盛んに稚魚放流をしてくれているのでね。タイの稚魚も放流してくれたり、これはすごくありがたいです。

最近、獲れるようになったハモ

岩本さん:逆に全然漁れなくなった魚はいますか?アナゴもここ数年で激減していると聞いたことがあります。

幸内さん:アナゴは確かに減っていますね。乱獲が原因のひとつではないかと思っています。底びき網漁の場合はある程度、漁ができる範囲が限られます。カゴ漁は、カゴに餌を入れてアナゴがいれば自然に入ってくる仕組みです。底びき網がとどかない狭い範囲でもできるので、2つの漁で隅々まで獲り尽くしてしまったという現状ではあります。他にもエビやシャコも昔はよく漁れましたけど、最近は少ないですね。生まれたばかりのような小さいのはいるけど、どこかにいってしまうのか育たないです。

大皿さん:海の栄養がだんだんなくなってきているという話も聞いたのですが、その影響もありますか?

幸内さん:それもよく言われる原因ですよね。海が綺麗になりすぎたのが一番の原因じゃないかと言われてますけど、実際のところはよくわかりません。昔は家庭排水も川から流れてきてそれが魚たちの栄養源になってましたが、近年、川の水も綺麗になり環境には良い事ですが、栄養分は少なくなったのではないかと思います。神戸は海苔の養殖も盛んですけど、海苔には海の栄養源が大切なので、最近は育ちにくいと言う話も聞きます。でも神戸には近くに山もあり、その栄養分が海に流れてきてくれるので自然の環境には恵まれていると思います。

美味しい魚を食べるために、旬を教えてください!

船の前で話す幸内さん

岩本さん:季節ごとにさまざまな魚が漁れると思いますが、漁れる季節と旬って異なりますか?

幸内さん:旬の魚で料理されたら間違いなく、その魚の最高の美味しさを味わうことができます。美味しいものが出てくる季節とたくさん漁れる季節はやっぱり違いますよ。春の産卵時期にかけてヒラメとかチヌとかタイが動き出すので漁れるようになりますけど、産卵の時の魚はどうしても卵に栄養がいくので旬の厚身のある濃厚さを味わえないですね。
春の産卵期が終わって夏になったら、ハモやエビ、タコが漁れるようになって美味しいですよ。秋は小魚ですね。春に生まれたのが育ってきたのか、アジなんかもよく漁れます。タイの旬は秋ですね。一番美味しいのは11月ごろ。冬の魚はどれも産卵前で脂がのっているので、ヒラメなんかもすごい美味しいですよ。

岩本さん:5月ごろのチヌは美味しくないって聞きます。だけどこの前、チヌの干物を初めて食べてみたんですけど、みなさんから聞くイメージよりはすごく美味しくて。チヌって他ではクロダイとしてタイと遜色なく見られるような魚だと思うので、違う食べ方やいろんなアイデアレシピを出していけばおいしく召し上がっていただけるんじゃないかなとか思いました。

幸内さん:そうですね。チヌは4月の後半からゴールデンウィーク中にどうすんねんこれ、ってくらいたくさん漁れるんですよ。でも産卵期が終わったチヌは子どもに栄養が全部入ってるのでペラペラで。でも本来は脂ののった魚なので冬に食べたら確実に美味しいですよ。僕らにとって漁業のPRしてもらったり、いろいろ考えてくれることはありがたいので、協力できることはしていきたいと思っています。

神戸の漁業の今とこれからをどう見る?

朝、駒ヶ林魚市場には漁船で獲れた魚を届ける

岩本さん:PRなどで協力してくれるのはありがたいとおっしゃってましたけど、他にも外部に期待していることや課題って何か感じてますか?

幸内さん:やっぱり神戸にも漁師がいるというのをどれだけの人が知ってくれているのかがわからない課題がありますよね。下町の人はみんな知ってますけど、北区の方にいくとなかなかイメージしづらいと思います。だから神戸にも美味しい魚があるよって言うのは伝えられたらいいですね。漁師は実際にたくさんいますから。東須磨のここだけでも80人くらいの漁師がいますよ。

多々良さん:80人もいるんですか。すごいですね。漁師の数が減っているとかはないですか?

幸内さん:それはないです。若い子が次から次に入ってきてます。うちの場合は子どもが娘なので後継とかは考えずに、僕が引退したら廃業ですわ。漁師は定年退職がないのでね。生涯現役を目指してがんばっています。

大皿さん:漁師さんは、漁師じゃない家系の子もなろうと思ったらなれるんですか?

幸内さん:なれますよ。だけど一人前になるためには8年くらいかかります。後継者として若い子をどんどん育てんとあかんと思いますけど、経験はやっていけば身につくけど根気と体力のいる仕事なのでね。すぐに辞められるような心構えでは難しいです。僕の場合は全部ひとりでやってますしね。網の組み上げから修理も自分でやっています。網って既製品で売られてるんじゃないんですよ。自分で発注して作ってもらうか、長細い網を買ってきて自分で切り縫いするか。網の目もちょっとずつ大きさが違ういろんな種類が売ってますから、組み上げていったら漁師ごとに少しずつ違う網になってますよ。

岩本さん:だからでしたか。別の漁師さんに取材に行った時に、網の写真は撮らないでねって言われたことあります。素人目ではわからないですけど、いろいろあるんですね。
今日はたくさんお話しいただきありがとうございました。