神戸市の西区で、毎月20日に、「ウェルアベニューマルシェ」というマルシェが開かれているという話を耳にしました。
マルシェを主催しているのは、前に「種はおよぐ」でも取材した、石野さんや稲垣将幸さん(愛称クリス)を中心とした西区の若手農家たち。
詳しい話を聞きに、マルシェに取材に行きました。
マルシェの会場は賑わっていて、みなさん忙しそう。マルシェ主催者の方々に1人ずつ話を聞きました。
多々良さん:クリスさん、はじめまして、こんにちは。実は、「種はおよぐ」では、クリスさんを一回取材させてもらってるんですよね。僕ははじめましてですね。その記事を読んでない人もいるので、改めて自己紹介してもらっていいですか?
クリスさん:本名は稲垣将幸なんですけど、クリスって呼んでください。 最近カフェをオープンしました。今日も出店していますけど、C-farmっていう名前でカフェをやっています。農業もC-farmっていう屋号です。農業研修をナチュラリズムファームの大皿さんのところでやっていて、(2022年)11月いっぱいで終わるんです。それが終わったら独立して自分の畑で農業をはじめます。
多々良さん:今はもう、畑は借りることができたんですか?
クリスさん:借りられています。
多々良さん:ウェルアベニューマルシェは、いつぐらいから、どういう経緯で、始められたのですか?
クリスさん:今年(2022年)の3月が初めての開催なんです。
大皿さんが、神戸市西区の区役所が新しくなるというので、区役所の方から「区役所のあたりで何かできないか?」というような話が来ているんよなぁ、とおっしゃっていました。
大皿さんからの話を、石野さんも僕も、聞いていて、
「僕らで何かやりません?やってみたいですね。」という話しをして、「じゃあちょっと進めましょう」というところから進んでいった話です。
多々良さん:それは、マルシェ的なことをやりたいという話をされていたんですか?
クリスさん:そうです。「若い人たちでやりたいですねぇ」という話もしました。
多々良さん:ウェルアベニューマルシェっていうネーミングは誰が決めたんですか?
クリスさん:大皿さんの家の中で、若手の農家が集まって、畳の上で「名前どうします?」「マルシェの特徴って何にします?」みたいな話になって。
メンバーの中で「健康」「ウェルビーイング」とか流行ったのと、今マルシェをしているここらへんは場所も広いですし、フィットネス的なことができたりとか、健康を絡められたら面白いのができるんじゃないですか?という話しになりました。
開催予定の場所が並木道だったので、英語で「アベニュー」。並木道の下で健康を意識したマルシェということで、「ウェルアベニューマルシェ」で決まりました。
多々良さん:そのとき集まったメンバーは誰になりますか?
クリスさん:神戸地域おこし協力隊の千葉さんと、大皿さんの息子さんの安紋君と、ポスターとかデザインしていただいている佐々木さん、この5名でミーティングやって、この名前でいきましょうって、その場で決まりました。
始めはその5名で、今は、研修生など徐々に若いメンバーが増えていってます。
多々良さん:皆さんに声をかけてどんどん参加しませんか?みたいな感じで増えていったのですか?
クリスさん:そんな感じですね。やっぱり必然的に若い人が少ないので、だったらこのメンバーしかないよねって。
多々良さん:西区の若手のみんなって、もう結構繋がっているんですか?
クリスさん:繋がっていますね。出店している若い農家さんとかいますし。ほとんど知り合いですね。
多々良さん:やってみてうれしかったこととかってありますか?
クリスさん:一人、地元の方で必ず来てくれるおっちゃんがいるんですけど、来て「今月も来たよ」って言ってくれるんです。前回は雨でも来てくれました。
「生きがいやから」「楽しみやから」って。うれしいですよね。
多々良さん:それは嬉しいですね。
今後、このマルシェがどうなっていったらいい、とかありますか?
クリスさん:まだ認知度的には低いので、「20日はウェルマル」ってなったらいいですね。 この辺りの地域の人たちが来て、ママさんパパさんは子どもを連れてご飯食べてて、一部の場所では朝活みたいな運動していて、最後は野菜買って帰るような。休みの日のリフレッシュになるような場になってくれれば嬉しいです。
多々良さん:ネーミングの通りの、西区の人たちが健康になって、野菜買って、帰るみたいな。
クリスさん:一番いいですよね。
多々良さん:石野さん、こんにちは。「種はおよぐ」では、石野さんも「田の樹んフルーツ」として、一回取材させてもらってるんですよね。その記事を読んでない人もいるので、改めて自己紹介してもらっていいですか?
石野さん:石野武です。なちゅらすふぁーむという屋号で農業をしています。就農して6年目、神戸市西区神出町というところで農業をしてます。
就農のきっかけは、自分が有機農業に関わったことがなくて、妻から食の大切さを聞いて、それでやってみようかなというのがきっかけです。せっかくだったら体にいいものをということで、奥さんもスーパー行って裏を見て買う人やったんです。
多々良さん:もともと西区に住まれてたんですか?
石野さん:いや、僕は京都出身なんです。妻は神戸市西区出身です。農家ではなかったですけどね。乗馬クラブの会社で一緒だったんです。そこで出会って、妻の影響で農業に興味を持つようになって、農業をやってみたいと思ったんです。
神戸市では、農家になるために、1200時間の研修時間が必要なんです。兵庫楽農生活センターの半年のコースを受けたりとか、NPO法人のところで働かせてもらったりとか、農家さんのところに手伝いに行って働かせてもらったりとか、3つの研修受けて、一旦北区で就農したんです、実は。
でも、自分のつくりたい作物が土に合ってないかな?とかいろんなことがあり、西区になりました。
多々良さん:ちなみに、そのつくりたい作物って何ですか?
石野さん:ラディッシュですね。ラディッシュとか、まぁ野菜全般を作りたかったんです。
神戸市北区で借りた畑は、お米がすごい合う土だなぁと最初の頃感じたんですが、やはり、野菜は少し厳しいのかなと思い、西区に移りました。
多々良さん:クリスさんとは結構前から知り合いだったんですか?
石野さん:2年前ぐらい前に知り合いました。僕は、ナチュラリズムファームに納品に行くことが多いんです。野菜をまとめて配達するグループを作っているので、割と行くことが多いんです。
クリスさんはナチュラリズムファームで研修されていて、そこで知り合いました。意欲的な方です。
多々良さん:そういう繋がりがあるんですね。
さっきクリスさんから聞いた話では、石野さんとクリスさんが、西区の若手で、マルシェをやりたいよねって話をしたんですよね?
石野さん:そうそう。他のマルシェを見ても、なかなか若手というかそういう人たちがやってやろうというのが少ないかなって思っていました。
西区では、マルシェのイベントがなかったので、できたらいいねみたいな話をしていたところ、区役所の方から大皿さんにお声がかかって、クリスさんと私の二人が何か面白いことをしたいというのを知っていたから、繋いでくださったという経緯があります。
多々良さん:今後、ウェルアベニューマルシェがどうなっていったらいいなという展望はありますか?
石野さん:僕ら有機農家で「健康」というところをコンセプトにしてるんですけど、割とざっくりしています(笑)。それは、縛りを少なくして色んな方に出店してもらいたいということもあって、アクセサリー売る人だったりとか、飲食以外の本当にいろいろ活躍されている小さな事業者さんと連携して、広がりができたらいいなと思っています。
こういうコンセプトでやります、オーガニックでいきますとかではなく、農薬はかけているけど控えているとか、環境に配慮したりとか、みなさん色んな努力や工夫の中で農業をやっています。すごく曖昧なんですけど、出店したいと来られた方には必ず会うようにしていています。
すごい広がりができたらいいかなと。
多々良さん:西区で作られた野菜で食品を作られている方もいらっしゃいますね。
石野さん:そうです。西区でできたものはそれはそれでうれしいんですけど、どこから来られてもいいと思っています。兵庫県外でも全然いいかなと思っています。
この辺り、西神エリアが盛り上がれば一番いいなと思います。
多々良さん:お話ありがとうございます。
他、若手で運営に参加されている方々にも少しお話しが聞けました。
千葉涼さん
ウェルアベニューマルシェの運営メンバー。
神戸市の地域おこし協力隊をやっていたそう。
2022年12月末から神戸市西区神出町で農業スタート。屋号は決まってなくて「千葉農園」にしようかな。レンコンを栽培したいなと思っていて、夏はトマト・きゅうりを中心に育てようかなとおっしゃっていました。
切原卓さん
ウェルアベニューマルシェの運営メンバー。
前に農業研修の記事で取材させていただいた方で、ナチュラリズムファームで現在研修中。
神戸市西区で畑を借りることができて、「KOBEきりはら農園」として農業スタート予定。
個人の方向けに野菜セットを販売することを考えているとのこと。
出店者の方へも少しお話しが聞けました。
谷下農園
就農は2006年で、神戸市西区神出町で16年続けられています。
有機野菜を作っています。
小麦もつくられていて、奥様がそれを使ったパンを焼いていらっしゃいます。
「すずめや」という屋号で倉庫をパン工房にして、そこでパンを焼いています。
こういったマルシェでパンを売っているそう。
果樹もあり、レモンも作っています。もうすぐ金柑とかもできるのだとか。
1004(イチマルマルヨン)
ショートケーキ・クッキー専門店。
「美味しいものを作るのは、自分の技術だけじゃなくて、材料がないと美味しいものは届けられない。なるべく直接関われる農家さんと共に良いものを作っていきたい、伝えていきたい」と熱くお話を聞かせてくれました。
文:多々良直治
撮影:岩本順平
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