種はおよぐの副会長で、イラストレーターの山内さんの個展「風景を持ち帰る」が、灘区にあるCsewにて行われました。その会期中に催されたトークイベントは、イラストレーターの個展であるにも関わらず、なぜか種はおよぐのこと。地元のクリエイター、料理家、一次産業従事者たちをつなげ、持続可能性についての議論から、地域経済や縄文時代の生活についての話題にも移りました。そんなトークの一部をご紹介します。

※トークの様子の写真が1枚もないという失態。

クリエイターと生産者が一緒に活動する場所。

山内さん(イラストレーター):種はおよぐという一次産業のプロジェクトに関わっています。農家さんがその場所で野菜をつくり、料理家さんたちが地元の野菜を使って料理するように、作家も地元の材料を使って展覧会ができたらと思っていました。そのヒントをもらったのが種はおよぐでした。六甲山のふもとで、六甲山材を使ってやりたかったんです。

服部さん(クリエイティブディレクター):種はおよぐって変なチーム名ですよね。これ何だっけ。

山内さん:種って、そこに植えたらその場所で実がなります。農村と都市をつなぐという意味で、種が動いてもいいんじゃないっていう。あとメンバーにクリエイティブ側の人が多くて、農業に携わってない人たちも関わっていることによって、アイディアや発想がすごいおもしろいんですよね。

服部さん:僕はgrafというデザインユニットをしておりまして、今年で25年を迎えます。デザインの動きはずいぶん変化してきていますし、山内所長が言われたように、自分たちの能力をどのように活用していくか、どのように地域に根ざしていくかということをやってきました。

山内さん:所長じゃないです。

大皿さん(有機農家):神戸市の西区で有機農業やっています。野菜をつくって街の人たちに届けたり、農協さんを通じてスーパーに並べてもらったりしています。種はおよぐを通じて、農業周辺で起こってる問題解決に何かできることはあるかなと模索しています。

(2022年秋に行われた、つながるレストランの様子)

牧野さん(神戸市役所):私は神戸市役所の経済観光局農水産課の担当課長です。みなさん「食都神戸」という言葉を聞いたことありますか?

会場:(手がパラパラと)

大皿さん:3人いたらいい方ですよ(笑)。

牧野さん:がんばります。神戸は海と山が近いので、個々の良い取り組みや人と人がつながったらいいなと思っています。神戸の農業や漁業のことを知って、考えて、どうやったらもっとつながっていくのかということを、みなさんとざっくばらんに話せたらうれしいです。

鶴巻さん(兼業農家):僕は神戸市北区の農村に9年前に移り住みました。農業は少ししているのですが、メインの活動としては、移住のこと、創業のこと、就農のことなどに事務局やコーディネーター的に関わっています。なのでこういう場では、農家とかの枠ではなく、いつも司会とか進行役っていう。

山内さん:若干マネージャーですよね。

(いつかの山内さん、鶴巻さん、大皿さん、服部さん)
(いつかの牧野さん(右から2人目)。現場にたくさん来てくれます。)

服部さん:生産、流通、加工、消費者みたいな、それぞれの役割を担っている人たちがチームになっているのがいいですよね。僕らは何を打ち破っていかなあかんかというと、大量生産されて、顔の見えないものを食べてきたっていうことなんです。これは、1億2000万人いたら仕方ないことやったと思う。ですけど、これから人口が減っていくことを考えると、生産と消費の仕組みを改めて考え直さなきゃいけないのは、もう全員の課題ですね。我々の場合は課題ありきというよりも、むしろ新たな課題発見のために泳いでるっていうところがある。なので、見えないものを探し出していくことが種はおよぐのおもしろいところで使命がありますよね、大皿さん?

大皿さん:え、なんでしたっけ?あんまり聞いてなかった(笑)。僕は農業の課題解決っていうのを、このメンバーにサポートしてもらえたらありがたいです。食料問題は、実は消費者側としてはすごい切迫してる。

山内さん:でもみなさんたぶんわからない。食料って、足りなくなってくるんですか?

大皿さん:どうなんですかね。ゴシップ的にも言われたりするから真意はまだ分からないですけど。ただ言えることは、農業者の人口が昔から激減しています。僕は2010年に就農したのですが、そのときに調べたら250万人いました。それが今は125万人ほどしかいない。さらに言うと、有機農家って全体の農業者の0.6%しかいないと言われている。ということは、国民から見たら有機農家ってどこにいるのって感じで。ジャニーズより少ない。

鶴巻さん:いやそこと比較!?

大皿さん:一応農水省的には、2050年を目途に25%ぐらいまで有機栽培の取組面積を引き上げようと言ってるんですけど、自給率も上がらないんですよね。

服部さん:米の価格が下がっていっているのが実は一番大きいような気がしますけどね。

大皿さん:そうなんです。米食じゃなくなっている。みなさんパンを1日1回食べませんか?自給率上げようってみんな言うんですけど、野菜だけじゃなくて、実のところ米と小麦の話が一番大きいんです。

服部さん:麦の総輸入量で考えると、ほぼですよね。例えば、昔は淡路島で麦をつくってたんですよね。黄金の島って言われた。それで、そこから玉ねぎになって、たまねぎ重たいのでレタス農家になっていってるっていう。グリーンアイランド。

鶴巻さん:新規就農しようとすると、イチゴなど、高い値段でしっかり売れるものをやりましょうと。けれど、例えば新しく始める人がみんなイチゴをつくったら、消費できる先はそんなにあるんだろうかって傍から見ると不安になったりします。

大皿さん:やっぱり高収益作物なんですね。新規就農しても経営が成り立たないと問題ですから。

服部さん:付加価値性の高いものをやりましょうってみんな言うわけじゃないですか。でも本当は価値生産をやらないと。みんなが価値生産しないと、本当の付加価値生産にはつながらない。やっぱ価値生産っていうのにもう1回たどりつかないと。

牧野さん:食料が逼迫してきたら、お腹が膨れる米に戻るかもしれない。日本って米の生産が合っているんです。田んぼに水を張っていると草が生えにくいので、高温多湿の風土に馴染む。

大皿さん:僕は小麦とか大麦も育てているんですけど、断然米の方がつくりやすいです。小麦は梅雨の時期に収穫になるので、カビが出ないかなとすごい心配なんですけど、米はやっぱり安定しているんですよね。でも米の値段が安い。将来的な食料危機と重なったときに、大変なことになるんじゃないかなと個人的には思っていますね。

適性ってなんだろう?

服部さん:こうした背景を知っていくと、今まで通りじゃないことをどう進めていくかっていうことがクリエイティブじゃないか?みたいな話ですね。

山内さん:最近半農半職といった話題も挙がるんですが、本業があっても、半分別のことをしていくというか、それだなと思っていて。今までやったら、一つの職業で一生を終えることがステータスというか、かっこよさだったような気がするんですが、なんかそういうことじゃないというか。

服部さん:……ちょっと酔っぱらってきて喋りたくなってきたわ。やっぱりね、AppleとかMicrosoftって凄いのですよ。21世紀的というか。今世紀の価値創造してしまったのですよね。

山内さん:(大丈夫か…?)

服部さん:例えば、お金の話だけでいくと、Appleって300兆円、Microsoftも250兆円くらいです。Amazonは150兆円ぐらいかな。これ合わせて650兆円までいくと。日本の企業って、全部合わせて800兆円くらいなんですよ。いままで美徳とされてきたことが、もう完全に裏いってるというか。長時間働いて、すごいがんばったね、貢献したよねあの人っていう日本の美徳としてあったことが、単なるアメリカの3つの企業に迫られてる。やはり新しい取り組みから時代の価値を生み出す事が私たちの役割になるのですよね。

山内さん:確かに。

服部さん:だから、お金儲けというか、生き方そのもの自体を考え直さないといけなくて、それ自体を問われているっていうのが今なんだと思う。

鶴巻さん:それでいくと、日本の里山モデルは世界に誇れるんじゃないかっていう話があります。自然を残そうとした時に、人間が完全に手を引くのではなく、適切に手を入れて、自然からも恵みをもらいながら、少しだけ方向づけをしてあげる持続的な暮らしといいますか。自然と人間の境界が曖昧な場所の価値が今後もっと注目されていく気がします。日本人は、携帯電話もガラパゴス化しちゃうし、歴史的には神道も仏教も混ぜちゃうし、いろんなものを混ぜたり曖昧にすることが決めきれない国とか政治と言われて攻撃されちゃうんですが、実はそれが日本のいいとこなんじゃないかなって最近思ったりします。

服部さん:そのバランス感ですよね。思い込んで働き続けてきたことではない、そもそも地べたにあること。里山とかもね、やっぱりエネルギー源として、薪を切っていたことが、環境を整えるサイクルになっていたわけです。だから山へ行って、木を切ってきて、それで風呂を沸かしてご飯を食べる。山は適切に管理されるし、人間のサイクルも回っている。これをどこかからエネルギーを持ってこようとしたから里山のサイクルがおかしくなっている。エネルギーをどこから取るのかとか、どれで生きるかみたいな話にもつながる。

(いつかの服部さん。今回は服部節全開!)

山内さん:世界にはバイオマス発電(※再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの)が盛んなところもありますよね。

服部さん:そうそう。突然ですが、例えばフィンランドって人口550万。いいですよね。

牧野さん:実は、日本の国土を考えると、3000万人くらいがいいみたいな話も。

服部さん:江戸期ですね。日本とフィンランドの国土はだいたい一緒の大きさなんです。だけどそこに1億2000万人いるのと、550万人しかいないのと。これどっちがいいかって話で、少ない方がいいという議論ではなくて、1億2000万人がこの土地の上にいるっていうことをもうちょい意識せんと、自分の本当の役割って何なのかってわからないなって。550万人やからこそ、お互いのことを考えて、税金高いけどお互い様で生きようという国のシステムができるわけじゃないですか。これ、怪しい議論じゃないですよ(笑)。

牧野さん:いや、でも鎖国という形もありなんじゃないですか?

山内さん:鎖国?

牧野さん:震災のときに、神戸市独立を思ったりしました。神戸市は鳥取県の3倍の人口がいるんです。市町村合併が活発に行われた時期に、最も適正な市町村の人口規模って7万人くらいと言われていました。顔が見えて、生活に困っている人のフォローもして、それくらいの人口が一番社会としてまとまるみたいな話を聞いて。小回りが利いて、アジャイル的(※小さい単位で動いていく考え方)にいいことができる。

山内さん:それって世の中の動きと相反してません?今どんどん都市部に人口が集中してきているこの時代で、例えば人口密度が低い方がシステムは回っていくということですか?

牧野さん:人間が一番幸せなことって、自分のことを自分で決められるっていうことなのではないでしょうか。小さい方が自分のことを自分で決められる。だから適正規模の中で、ローカルエコノミーを回していきたい。地域通貨をもっと活用してもいいだろうし、自分たちのルールをつくっていかないといけないんじゃないかと。

服部さん:そうそう、幕藩ぐらいまでいくと、自分たちの土地にあるもので、隣の藩とやり取りしてたわけ。これ交換してって。もっとさかのぼると、縄文とか最高やで。縄文初期は人口少なかったんですよ。生活の道具だけつくっていたから、食べればいい、飲めればいいっていう道具やったんです。でも中期には温暖化したんですよ。あったかくなると爆発的に人口増えて、住まんでええとこに住むようになったんですよね。それで災害に遭うようになって、神頼みみたいなのが始まる。そうやって自分たちでコミュニティをつくり、守ったんです。そうすると、コミュニティの個性化が必要になって、デザインがデコラティブになっていくんですよ。そちらとは違うぞって言うために。

山内さん:おもしろい。

服部さん:それで、みなさんが3.11以降に価値観がすごく変わったのと同じような変化は、縄文中期後半にはいっぱいあったはずなんです。そうすると、デコレーションたっぷりやった器が、どんどんまたシンプルに、ミニマムになっていく。いわゆるモダニズムですね。前時代に疑いを持つんですね。個性を発揮しようとしてた時代に対して疑いを持ち出すっていうことが災害などによって起こり、人間の暮らしや風習に変化が出てくる。ここ何年間かの日本の状況と被るところがあります。だけど人が減った方がいいという議論は…。

山内さん:またちょっと難しい(笑)。

服部さん:鎖国じゃないけど、幕藩的な、エリアの個性をしっかりと思って、外交するという考え方に戻るっていう。だからそれがたぶんローカライズで。

山内さん:もちろん神戸市のことを考えるんですけど、でも近隣とも協力した方がいいかなって。神戸市っていう境界線は人が引いたものですし。それこそ、服部さんも関わっている瀬戸内経済文化圏もそうです。それぞれの個性のある町が、瀬戸内というエリアでつながってそれぞれで交流していくと。

牧野さん:個性を出そうと思うと、やっぱり自分たちのことを自分たちで決める必要があります。そうしたグループがたくさんできて、みんなで連携していくっていうのが大事で。連携しながら、自分たちで守るのも大事だし育てていくのも大事で、選択肢が広くありつつ、地産地消もしっかりやっていく。無理にやるんじゃなくて、選べるようにしてあげるっていうこともすごく大事なんじゃないでしょうか。

服部さん:それが基礎かもしれないね。それがベースにあってからこそ、交換していくものが現れてくるのかもね。

みんなが持ってるもので輪郭を構成すると、リンゴになる?

山内さん:イラストレーターとして、良い悪いの話ではなく、大量生産、大量消費の大企業のイラストを描いてますよっていうことが、一つのステータスみたいなところがあったりするんですね。

服部さん:もっとやってよ。

山内さん:いやいや、やりますけども。でもなんかそこは、これからの問題を考えるとすごく矛盾も抱えていて、近くの農家さんとか料理家さん、クリエイターとかを知っているのに、そこだけにコミットするのは嫌やなと思って。

服部さん:えぇーー。それもバランスやんか。山内くんのイラストがさ、アニメーションで巨大企業のビジョン描いちゃうとか。「いやーーすごい!で、お値段いくらだったんですか?」みたいな。

大皿さん:めっちゃ気になるわー。

鶴巻さん:めっちゃ羨ましいすわー。

山内さん:なんなん。

服部さん:そういう仕事もやる、こういう仕事もやる。自由について、さっきいいこと言ってたと思うんだけど、やっぱり自分が選択できるのが一番いいとすれば、それに文句を言う人はだめで。巨大企業のこともやってるけど、幼稚園内でのワークショップもやってるし、子どもとのお絵かきするし、そのバランスがいいんちゃうかな。

山内さん:もちろんそうなんです。でもこうしたローカルな仕事をするとすごいしっくりくる。やっぱり、自分にカチッと当てはまるというか。例えば自分がそんな大きい仕事をしたとして、それはイラストレーターとしてはうれしいけど、人間としてその先が想像できないし、そのイラストがどんな結果をもたらすか全然わかんないじゃないですか。例えば今日のこのトークイベントに来てくれたみなさんとコミュニケーションをすることって、すごく安心するといいますか。当たり前のことなんですけど、やっぱりしっくりきます。

(山内さんのイラストは、やわらかい。)

服部さん:山内くんのキャラクターやな。みなさん、これ伏線で、あそこの作品が全部完売するようなストーリーになっております。

山内さん:ちょっとホンマに!そういうことじゃないから!

牧野さん:その話でいくと、大皿さん鶴巻さん、農業やってる人もクリエイターですよね。

山内さん:そうなんですよ、イラスト描くからクリエイター、とかじゃない。

牧野さん:それぞれの立場で一生懸命新しいものをつくって、いろんな人にどうやって伝えるかというところで、単純にクリエイティブを発揮していてすごいなと。そういうことがいっぱいつながったらいいなと。

山内さん:そうですね。僕も農業のお手伝いを年に数回だけですがしているんですけど、自分のイラストが農家さんや漁師さんを少しでも手伝えたらと思うし。自分のこの変化を、一次産業の方に向けたいという使命感というか。

大皿さん:でもね、いろんな問題を考えて、農業がこのままでは駄目ですよねってやってくる人はあんまり続かなくて。どちらかというと、農業をやることで、自分にとってどんな作用が起こるかっていうのを感じる人の方が続いてるんですよ。数時間手伝いに行くのが息抜きになるとかね。もっと気楽に入ってくる方がおすすめかな。

服部さん:ジムぐらいの感じだったらあかんのですか、農業手伝いに行くのも。

鶴巻さん:それが種はおよぐで考えた「怠農研(https://tainouken.com/)」です!まさかこれも伏線ですか?

大皿さん:これいいよ。どれくらい身体を動かしたいかとか、どれくらい農家とコミュニケーション取りたいかとか、その辺も事前に聞いてくれるんですよ。

山内さん:イラスト書かせてもらいました。

大皿さん:これ俺の顔やん。

(怠農研のイラストも山内さん)

服部さん:単に課題解決することが欲求としてあるわけではなくて、よりおもしろいものにしたいとか、より巻き込みたいっていうことなんです。個人だけではできないことはわかっているけど、これだけいたらできるんちゃうかっていうことを、どんどんやるんです。戦略はあんまりない(笑)。でも戦略を立てるのはもしかしたらクリエイティブ側で、そういった役割で関係性を保っているような。なので、描こうと思えば30年後とかのビジョンをなんとなく描けるけど、ここに現場がしっかりとあって、普通だったらこうやけど、普通じゃ嫌なんだよねっていう、こういうメンバーがいる上に新しい道筋が開けていったらいいですね。

山内さん:講演会みたいや。

服部さん:もうちょっとだけお話するとですね、こういうメンバー構成でチームが存在していると、それぞれが思う形っていうのは、どれだけ言葉を交わしても一致させるのは難しいんですよ。ちょっとやってみたいことがありまして。

鶴巻さん:ワークショップはじまった(時間内に終わるのか…?)。

服部さん:赤い球があります。表面は赤くて、かじれるもの。かじると、中が白い。シャキシャキして甘酸っぱい。イラストに書くと、赤い玉にへたが1本、葉っぱ1枚。コンピューターのロゴマークにもなっていて…僕は風邪のとき、母親にすりつぶしてもらった思い出がある。さて、これなーんだ?

会場のみなさん:リンゴ~。

服部さん:そうなんです、リンゴですよね。いろんな人たちが輪郭を構成してこそ、中身が現れてくるんですよね。なので、リンゴに行こうぜっていうビジョンはたぶんあり得ないんですよ。

大皿さん:おー。

服部さん:チームビルドするときは必ずそうなんです。リンゴとは言わずに、みんなが持っているもので輪郭を構成するとリンゴになるっていう状態をつくるのが大事で、種はおよぐというチームはそれが出来上がっているんだと思っています。それぞれ思ってることもあるけど、農や食でもっと神戸の街が良くなったらいいよねっていう方向は一緒だから。時間軸が短かろうが長かろうがいいんじゃないって。どんな神戸像を描いてるかは、たぶんそれぞれ違うんですよ。なんだけど、何となくこうだよねって身近に感じてるし、話を聞くし、おもしろいし、そのおもしろさをもっと拡張するならば、こうした方がいいんじゃないかっていうのをやってるんですよね。

大皿さん:種はおよぐってミッションってないですもんね。

鶴巻さん:締まってきた感じですけど、山内さんはなぜこの個展のトークイベントを考えたときに、イラストレーションの話じゃなくて、こういうテーマの話にしたんですかって問いで、エンドロールを迎えようかなと。

山内さん:今日みたいな話が一番おもしろいわけですよ。なぜなら、生活に直結してるじゃないですか。おもしろいって言い方は語弊があるかもしれないですけど、自分や、自分の子どもや家族の未来を考えるわけです。そもそも、イラストレーターとか芸術家は、ホワイトキューブ、いわゆるギャラリーで展覧会をするっていう常識が少し嫌で。今回のこのCsewっていう飲食店は、僕はお客さんとして来ている場所なんです。風景を持ち帰るというコンセプトは、服を買うように、ご飯を食べるように作品を買ってほしいなっていうことなんです。

鶴巻さん:いいですねー。もっと語ってくださいよー。

山内さん:いろんなことが混ざっていいなと思っていて。僕は建築家の人とか大好きですし、料理家の人も大好きです。同業者だけで集まるってすごい固まってしまうと思うんですよね。僕、イラストレーターの知り合いがあんまりいないんですよ。

服部さん:知ってる(笑)。最後にね、山内くんのPRをちょっと頑張ってやります。イラストってもうちょっと軽いファッショナブルな扱いをされるはずだけど、山内くんのイラストってどんなところで使われてるかっていうと、コミュニティの話だとか、育児や介護の話だとか、社会課題を説明するときなんですよね。これがすごいなと思う。なので山内くんのイラストには必ず風景があって、そういう社会的風景が属するものを、山内くんに描いて欲しいっていうクライアントが多いんやろなと。

山内さん:(見つめる瞳)。

服部さん:図書館で、これ30年前に書かれた本ですよっていうところに、山内くんのイラストがあったらいいよね。言語化っていうのも便利なようで、言葉にするから削ぎ落としていることも多いわけです。だけど、空気感とかその景色とか、そういうものを言語以外で残すっていうことがイラストレーションの役割だとすれば、それをしっかりやっているんです。そういう人が仕立てた種はおよぐなので、今後も彼のイラストとともに、我々の活動を皆さんご理解いただけたらありがたいですね。

会場のみなさん:パチパチパチ(拍手)

鶴巻さん:(締まった!!よかったーーー。みんな酔いすぎだよ。)